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悲愴の水使い?

[911]  ROCO  2005-03-03投稿
言わなくてはいけない。
アリスにこれ以上ついてきてはダメだと言わなくてはいけない。今引き返せばまだ間に合う。
「アリス…」
「な〜に?」
「……ここから先は本当に危険。引き返してほしい。」
「何言ってるの。ここまで来て引き返すなんて無理よ。」
「…死ぬかもしれないのに?」
するとアリスはそっとサラを抱きしめた。
「そんな危険な所に小さなあなたをひとりで行かせられないわ。」
「……私は死ぬことなんて怖くない。」
するとようやくサラを解放する。
「だけどダメよ。私はあなたに死んでほしくないの。」
「……」
あぁ…とんでもない人を助けてしまったとサラは思った。
「分かった。なんとしてもあなたを地上に帰す。」
「2人でよ。」
とてもめずらしいことにサラは少しだけ微笑んだ。
「あら…」
いつも無表情なサラがめずらしく笑ったのでアリスは驚いた。笑ったことにではなく…
「あなたそうやって笑えば美人よ。もっと笑うようにすれば?きっとどんな男もいちころね。」
「いちころ?」
「今はまだ子供だと思って相手にしないでしょうけど、もう4、5年たてばモテるわよ。」
「…私は子供?」
「あら…違うの?12、3歳だと思ってたけど…」
「私は15歳。」
「あら、そうだったの。すごい童顔ね。」
しばらくそんな会話を続けた。サラにとってこんなに長く会話が続いたのは初めてだった。
「……」
突然サラが立ち止まり黙って奥を見つめた。
「どうしたの?」
「妖気が近い。すぐそばにいる。」
サラは身構えた。妖魔の居場所を探すため全神経をそそぐ。
すると突然地面がひび割れてそこから妖魔が体をだした。
「ガァァ!」
親の妖魔は子供の倍以上に大きい。
『清き水の子よ、刃となりて魔の者を切り裂け』
子供の時と同じ魔法だが、サラは魔力を強めた。
「ガァァァ!」
水は剣のように妖魔を切り裂いた。しかし妖魔は少しも怯まなかった。
「……」
サラは唇をかんだ。これは全力で戦わなければならない。
『深き水の精よ、魔を切り裂く剣となれ』
さっきよりも水の勢いが激しくなった。容赦なく妖魔を切り裂く。
「ガァ!」
よほど痛かったのか、妖魔は地面に穴を掘ってもぐっていった。
「逃がさない」
サラは急いで後を追った。
「あ、ちょっと待って…」
自分も後を追い叫ぶアリスだが完全にサラを見失ってしまった。
「う、嘘でしょ…。」
ひとり暗闇に残されアリスは立ちすくんだ。

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