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餓鬼 7

[783] 紗依枯(さいこ) 2012-09-02投稿
「本当に遅くなってしまった…」
私の腕時計は23:00になっていた。
タクシーに乗り込み、喜美の事を考えた。
もう寝ているだろうか。

家に着くと、まだ居間の明かりが点いていた。
「ただいま〜!」
玄関を開けると笑い声が聞こえて来た。
「尚輝さん、お帰りなさい!由梨絵さんとお食事終わってワイン頂いてたの。」
喜美が少し頬を赤くして出迎えた。
私のコートと鞄を両手に持って居間へと戻って行った。
「いらっしゃい。いつも喜美がお世話になって申し訳ありません。」
由梨絵は椅子から立ち上がり会釈した。
「お世話だなんて、私こそ喜美さんに良くして頂いて感謝してますの。
私には子供がおりませんので、喜美さんが自分の娘だったらって、本当に思いますわ。」
喜美は由梨絵の言葉を聞いて、照れた様に私を見た。
「さぁ、ご主人様が帰宅されたから私の役目は終わりね!お疲れでしょうし邪魔者は帰りますから、ごゆっくり!」
由梨絵は私達をちょっと冷やかす様に微笑んで、コートに手を掛けた。
「もうこんな時間だし、良かったら泊まって行きませんか?」
喜美は心配そうに由梨絵に言った。
由梨絵は「大丈夫よ!」と、玄関へ向かった。
喜美と私は玄関の外まで由梨絵を見送った。
「まだまだ子供みたいな妻ですが、これからも宜しくお願いします。
由梨絵さんの事を慕っておりますし、妻の母代わりになってやって下さい。」
「喜んで!」
由梨絵は私達に手を振って足早に帰って行った。
後ろ姿が段々小さくなって行った。
「う〜!寒い!早く中に入ろう!」
私は喜美の肩を抱いて家に戻った。

うふふ…うふふふ。
由梨絵は笑いを堪える様に両手で口を塞いだ。
「…母代わりになってくれる?今更、何言ってるのかしら?
喜美は私の物よ!
アンタの物じゃないのよ?わかってないわね…仕方ないわ。解らせてあげなきゃ、アンタはもう要らないのよ!」
笑い顔はいつしか形相が変わっていた。
アパートに着くと、明かりを点けて仏壇の前に座った。
夫の写真を手にして「今度はあの女が欲しいの。貴方も応援してね。」そう呟くとニタリと笑った。

その頃、私も喜美も、由梨絵を疑うなど考えもせず、出会えた事を喜んでいた。




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