ベースボール・ラプソディ No.67
指先でまなじりの涙をはらった綾乃は、健気に作り出した笑顔を哲哉にむけた。
「恥を忍んで会いにきたのは、一言だけでもちゃんと謝っておきたかったから。
それと、少し気になった事もあったから……」
言葉を濁した綾乃だったが、哲哉を見て少し考えこむと、意を決して切り出した。
「結城君にならわかるかもしれない。
真壁君って、投球フォームを変えたのかな?」
唐突な質問に首をかしげる哲哉。
「俺とバッテリーをくむようになってからは、一度も変えていないけど?」
「……上手くは言えないけど、私の記憶の中の真壁君とはどこか違う気がして」
「以前のフォームはよく覚えてないけど、今のなら癖のない綺麗なフォームだから、違っていても心配ないと思うけど」
「……そうだね、私の記憶は十年も前のものだし、違っていて当然なのかもしれない。
単に私が、真壁君に会うための口実がほしかっただけなのかもしれないね」
大会の最中に訪ねてきたことを詫びると、綾乃はその場を後にした。
立ち去る綾乃の後ろ姿を、感慨深げに見つめる哲哉。
不意にその肩をポンと掴まれ、彼は驚いて振り返った。
「…しゅうっ、何でここに?」
ほのぼのと二回うなずいた小早川。
面食らう哲哉は、その後方に先輩達の姿を確認して長嘆息をついた。
「……大澤さんまで」
「…いや、お前の様子がいつもと違ってたから、つい………」
―同時刻、橘華高校
仲間達を追って急ぎ帰校した八雲は、野球部のグランドに一人佇んでいた。
「……?
誰もいない?
何でだ???」
「恥を忍んで会いにきたのは、一言だけでもちゃんと謝っておきたかったから。
それと、少し気になった事もあったから……」
言葉を濁した綾乃だったが、哲哉を見て少し考えこむと、意を決して切り出した。
「結城君にならわかるかもしれない。
真壁君って、投球フォームを変えたのかな?」
唐突な質問に首をかしげる哲哉。
「俺とバッテリーをくむようになってからは、一度も変えていないけど?」
「……上手くは言えないけど、私の記憶の中の真壁君とはどこか違う気がして」
「以前のフォームはよく覚えてないけど、今のなら癖のない綺麗なフォームだから、違っていても心配ないと思うけど」
「……そうだね、私の記憶は十年も前のものだし、違っていて当然なのかもしれない。
単に私が、真壁君に会うための口実がほしかっただけなのかもしれないね」
大会の最中に訪ねてきたことを詫びると、綾乃はその場を後にした。
立ち去る綾乃の後ろ姿を、感慨深げに見つめる哲哉。
不意にその肩をポンと掴まれ、彼は驚いて振り返った。
「…しゅうっ、何でここに?」
ほのぼのと二回うなずいた小早川。
面食らう哲哉は、その後方に先輩達の姿を確認して長嘆息をついた。
「……大澤さんまで」
「…いや、お前の様子がいつもと違ってたから、つい………」
―同時刻、橘華高校
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「……?
誰もいない?
何でだ???」
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