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日々が香ばしい8

[556] ともも 2012-12-15投稿
俺が想像していた以上に中は教会らしかった。

礼拝堂……でいいのだろうかこの部屋は。公園で見かけるベンチの二倍はある長椅子が、人間一人分通れるくらいの間隔を左右に空けて五列規則正しく並んでいる。
正面に見えるステンドグラスは女性を形作っていて赤や青といったきらびやかな光を足元の床に映し出す。
調度品の類は少なく、そのためか部屋の一番奥にあるパイプオルガンが大きな存在感をもって鎮座している。
部屋全体として厳かではあるがそのどれもが古い。冷房器具など見当たらないのに部屋全体が涼しく感じた。流石神の家。
まあ、単に外がくそ暑いだけなのかもしれんが。

なんとなしにもう一度パイプオルガン見た瞬間、奇妙な違和感に襲われた。脳自体を直接手で揺さぶられるようなそんな感覚だ。

思わずぶるると震えてしまった。

「どうかしたのですか?」俺の様子がおかしかったのか彼女が尋ねてくる。
「いいや、思った以上に涼しくてさ。」
と適当にごまかしておいた。
俺の様子に怪訝な顔をしながらも、こっちへ来いと顎で促す。
「奥に生活するための部屋がありますので。」
「そうスか」
礼拝堂奥の右にあるドアをまた蹴飛ばしながら開け、それに続いて俺も通ったのを確認すると今度はバックキックでドアを閉じた。
どうやらこの娘、非常に足癖が悪いらしい。

板張りの廊下は薄暗く、歩く度にギシギシと嫌な音をたてる。
「突き当たりの左にあるドアがキッチンです。」
俺を先導していた彼女は例によって足で以下略。

部屋に入って最初に抱いた感想は「普通」だった。よくも悪くも「普通」である。作って食べるだけの部屋なのか六畳ほどの部屋の中央に小さなテーブルと椅子がぽつんと置いてあるだけである。
正面にある流し台と冷蔵庫。右にあるガスコンロ。神の家だろうと関係なく「普通」だった。

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