失恋-下-
俺は昨日、実優に別れを告げた。
理由は、わからなくなったから。
自分が実優を好きになった理由を見失ったから。
おかしいだろ?
彼女を好きでいる理由を忘れる男はきっと俺が世界で初めてかもしれねぇ。
でも次の日、学校に着いてみると実優はいつもどうり笑ってた。
……なんなんだよ。
俺がいなくても大丈夫じゃねぇかよ。
なんで笑ってんだよ。
気まずいだろ?
俺ら、係も委員会も部活も同じで。
でもなんであいつは、普通なんだ?
3日後、俺らは偶然帰り道で逢った。
気になっていたことを問いかけてみる。
「なぁ……おまえ、オレがいなくても大丈夫なんだな」
すると実優は躊躇ったように話し出した。
「夏那たちのおかげかな。それにさ、なんにも始まんないじゃん」
「………」
「圭斗、大好き。でもね、あたしのことが好きじゃない圭斗に無理矢理あたしの気持ちを押しつけちゃだめでしょ!?」
「……実優」
俺、やっぱりおまえのこと、好きだと思うよ。
「ん?」
「……おまえ、俺より強いな」
そう言うと、実優は少し悲しそうにした。
「圭斗は優しいよ。圭斗はあたしに恋愛感情が無くなったら、それをちゃんと伝えてくれた。……それに、今も話しかけてくれたでしょ!?」
「…おまえのことを、くだらない理由で傷つけるのが優しいわけねぇだろ…。」
「ん? ごめん、聞こえなかった」
「いや、何も」
「そっか、じゃあね」
「ああ」
俺は家に入って、悔しさに握り締めた拳をさらに強く握り締めた。
なんで、なんで俺は言えなかったんだ。
実優は……、実優は、言った。
こんな俺に、「大好き」と。
なんで俺は言わなかった?
きっと、アレは噂でいう倦怠期ってやつで。
俺らはそれを、乗り越えられなかったわけで。
しかも大半は俺のせい。
最悪じゃねぇかよ……。
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