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日々が香ばしい10

[606] ともも 2013-01-30投稿
「そのお礼として私はささやかながらに貴方にお茶を振る舞う」
「うん」
「それは何かおかしいことですか?」
「いいえ、全く」

俺の返事に「でしょう?」とドヤ顔をする彼女。
こんなことで得意気になられても対応に困るだけである。
が、言ってることは別におかしく無い。変なのは態度だけだ。

「なら、いいじゃないですか」
クスリと微笑みかける。さっきまでの物言いとうってかわって、実に嬉しそうに。

そのギャップに内心ドキリ……としない。

「いいものか。万が一俺が暴漢だったりしたらどうするのさ」
勿論そんなことはないが。彼女の無用心さは頂けない。
「それは大丈夫でしょう」「どうして」
「だってあなた」
彼女は尚も嬉しそうに言う。
「そういうことができる程、度胸があるように見えませんから」
「それ褒めてるのけなしてるの?」
「冗談です」
クスクスと笑う彼女。駄目だ。いいように弄ばれている。

「昔から、人を見る目があるのです」
笑うのを止め俺の眼を覗き込む。彼女の瞳に自分の瞳が映って見えた。そして

「だから貴方は悪い人ではありません」
そう断言した。

「そういうものかな」
「そういうものです」
その根拠は何処にあるのかは解らないが、彼女がそう言うからにはそうなのだろう。

「それに」
「それに?」
「我が家の家訓に『借りは必ず返す』といものがあります」
言葉だけ聞くと酷く物騒に聞こえる家訓だな。
「なので、このまま貴方をおめおめ帰すわけにはいきません」

もう一度思ったがホント物騒な言い方するな。
その剣幕に圧される俺。

「わかったよ。家訓なら仕方ないな」
「そうです家訓ですから仕方ありません」
言って彼女はまたニコリと笑った。

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