携帯小説!(PC版)

[606]  尊吾  2006-09-19投稿
男が刑務所を出所して、1週間が経っていた。

懲役12年…男は飲酒運転で交通事故を起こし1人の少女を死なせてしまっていたのだ。


男は死に場所を捜していた。家族も友人もいない男にとって、この出所は死への通告であったのだ。

男の足は、自然と当時の事故現場へ向いていた…見通しのいい交差点の脇には、古びた献花台が置かれている。献花台の花には蝶が止まっていた。
男はその隣に腰を下ろし、交差点見つめてた。男は何時間も何日もそこに座った。男の背中はしだいに丸くなり、動く事はなかった。


男は夢を見た。そこには家庭があった。割れんばかりの家族の笑い声があった。男は夢を見た。そこには一人の少女がいた。少女は家族の笑い声の中、遠くへ走っていった。
男はその少女を必死で追いかけた。走って走って、追いかけた。ようやく捕まえると少女の口元から光る蝶が漏れだした。しだいにその蝶は広がり、ゆっくりと男を包みこんでいった…



男は交差点の真ん中で倒れていた。トラックに体当たりしたらしい…

男の周りには多数の蛾が死んでいた。


13回忌の夜である。

感想

  • 3939: すごいストーリだね。 [2011-01-16]

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