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空手道 佐山塾9

[640] ハバネロベッパー 2014-03-12投稿
道場だった建物はそのままだった。
ふと見ると壁にポスターが貼られていた。
それには、師範ではなく、若い道場生がハイキックを決めている写真が使われていた。

この顔…

あ…少年部の…

それは当時少年部で一番目立っていた阿南君だった。

そうか…阿南君も今はもう大人だ…

当然だろう。

あの日からもう15年だ…

阿南君も25くらいか?

どうやら指導員になっているらしい。

道場は同じ中央線の別の駅に移転したと書いてある。

ま、もう関係ないが…

本社に出社すると社長に呼び出された。
現場の統括をしろとの事だった。

前任者が病気療養で長期休暇の為、俺が急遽呼ばれたらしい。

かなり大きな案件が三件あった。

早速俺は現場まわりに出掛けた。

挨拶まわりを兼ねて現状把握をしなければならない。

二件まわり最後の現場につくと何やら揉めていた。

とりあえず現場監督に挨拶をと名刺を差し出すと、

あんたが新任者?
ちょうど良かったよお、あのさ参ってんだよー

と、いきなりデカい声で監督が話し出した。

何かあったんですか?

実はよお、防災設備の野郎がよお、来ねえんだよーったくよお、二時間押しだぜぇ、段取り狂っちまうんだよぉ、奴らが来ねえと先に進まねえんだよおったくよお…

監督は口は悪いがいわゆるざっけないオヤジで、俺はこういうオヤジが基本的に嫌いではない。

電話は?

つながんねーょ!
でやしねぇ!

わかりました…じゃちょっと私が確認してみますから。

頼むぜ〜

わかりました…

ここの防災設備会社はと…
俺が資料確認していると、

来た来たっ!
と声がした。

見るとごつい身体のオヤジと三人ほどの若い人間が歩いてくる。

ん?どこかで見た顔…

よく見るとごついオヤジは佐山師範だった。

あ、そう言えば佐山師範は防災設備会社の社長だった。

まさかこんな所で…
いゃ〜遅くなっちゃって〜

そう言いながらやって来た。

現場監督は怒り心頭でわめき散らしている。

俺は監督をなだめつつ師範に挨拶をすませ、遅刻の理由を聞いた。

いゃ〜渋滞で…

渋滞で二時間ですか?

酷い事故でねぇ…

そうですか…わかりました…では早速仕事してください。
工期迫ってますから。

はいはい…
と、師範はにやけた。

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