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流狼-時の彷徨い人-No.79

[546] 水無月密 2014-06-15投稿
 段蔵を見上げる半次郎は、今更ながらに飛び加藤の異名の意味を理解していた。

 その真骨頂である跳躍力を出してきた以上、次の攻撃はこれまでと一線を画するものとなる。

 そう判断した半次郎は、どのような攻撃にも即応できるように身構えた。


 半次郎の戦闘準備が整っていることを確認した段蔵は、再び口元に笑みを浮かべた。

「オーヴってのは密集させると硬度と輝きを増す。
 まぁ、この程度なら一、二発当たっても死にはしないが、それでも骨は砕けるぜ。
 ちゃんとかわせよ」


 薄暗い樹海の中、段蔵が作り出した無数のオーヴは 、夜空に散りばめられた星々のように輝いてみえた。

 段蔵が指を弾くとその全てが流星と化し、半次郎の頭上へと降り注ぐ。


 突然降りだす雨にたいし、人は無力である。

 傘でもあれば話は別だが、その代わりとなるだけの防壁をオーヴでつくりだす錬成力は、今の半次郎になかった。


 かわすしかない。

 瞬時にそう判断した半次郎の体内で、オーバードライブが再起動する。


 無数に降り注ぐ光弾の中、制御をとかれた半次郎の身体が驚異的な速度で弾幕のわずかな間をかいくぐる。

 光弾は半次郎の残像を次々ととらえてはすり抜け、地面に被弾していった。

 そして、最後の光弾が半次郎の足元で砂塵を巻き上げた時、身体に負荷をかけすぎたつけが半次郎の全身をおそった。


 無理な動きは筋繊維を各所で断裂させ、その衝撃に耐えかねた骨には複数のひびがしょうじていた。


 激痛で意識がとおのく半次郎。

 だが、まだ倒れるわけにはいかない。

 彼は段蔵の攻撃を回避しただけであり、ただそれだけなのである。


 確固たる意志が肉体の限界を越え、途切れかけた意識を繋ぎ止めるべく咆哮をはっした。

 それにより研ぎ澄まされていく五感は、瞬間的にとはいえノアや段蔵の感性をこえた。


 その一瞬に半次郎が察知したのは、離れた場所に潜伏する複数の気配。

 見事に統率制御された集団の中で、わずかに漏れ出した殺気であった。

 そして、その矛先がノアにむけられている事を。



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