流狼-時の彷徨い人-No.80
「……一つも当たらねぇのかよ。
まったく、可愛いげのねぇ野郎だ」
言葉とは裏腹に、半次郎への評価をたかめていく段蔵。
そして彼は考える。
今、この場で手加減なしの勝負を半次郎にしかけても、十分楽しめるのではないかと。
段蔵のオーヴが僅な殺気をおびた刹那、その背後に忍び寄ったノアの剣が振りおろされた。
煌めきながら弧を描く剣に、是非もなく一刀両断に切り裂かれる段蔵。
だがその姿は、すぐさま霧散して無とかした。
「詰めが甘いな。
剣を手にしたままの相手を、俺が無警戒にするとでも思ったのか」
いち速く死地を離脱した段蔵が、自分の幻影を切り裂くノアを凝視しつつ呟いた。
だが、彼はすぐに気づく。
剣がふれればそれがブロッケンであるとわかるはずのノアが、剣を振り終えたまま無反応であることに。
「詰めが甘いのはキサマだ、ブロッケンを作り出せるのが自分だけだとでも思ったのか?」
段蔵から、余裕の笑みが消えた。
すぐさま防御体勢をとる段蔵。
だが、その体勢がととのうのを待つことなく、ノアの剣が段蔵をとらえようとしていた。
『かわしきれんか。
しょうがねぇ、左手はくれてやるよ』
腕一つ捨てることで窮地をしのごうとする段蔵を、半次郎の横蹴りが弾き飛ばした。
空を切るノアの剣。
そのノアを包み込むように半次郎が抱きかぶさった刹那、複数の銃声が富士の樹海に谺した。
まったく、可愛いげのねぇ野郎だ」
言葉とは裏腹に、半次郎への評価をたかめていく段蔵。
そして彼は考える。
今、この場で手加減なしの勝負を半次郎にしかけても、十分楽しめるのではないかと。
段蔵のオーヴが僅な殺気をおびた刹那、その背後に忍び寄ったノアの剣が振りおろされた。
煌めきながら弧を描く剣に、是非もなく一刀両断に切り裂かれる段蔵。
だがその姿は、すぐさま霧散して無とかした。
「詰めが甘いな。
剣を手にしたままの相手を、俺が無警戒にするとでも思ったのか」
いち速く死地を離脱した段蔵が、自分の幻影を切り裂くノアを凝視しつつ呟いた。
だが、彼はすぐに気づく。
剣がふれればそれがブロッケンであるとわかるはずのノアが、剣を振り終えたまま無反応であることに。
「詰めが甘いのはキサマだ、ブロッケンを作り出せるのが自分だけだとでも思ったのか?」
段蔵から、余裕の笑みが消えた。
すぐさま防御体勢をとる段蔵。
だが、その体勢がととのうのを待つことなく、ノアの剣が段蔵をとらえようとしていた。
『かわしきれんか。
しょうがねぇ、左手はくれてやるよ』
腕一つ捨てることで窮地をしのごうとする段蔵を、半次郎の横蹴りが弾き飛ばした。
空を切るノアの剣。
そのノアを包み込むように半次郎が抱きかぶさった刹那、複数の銃声が富士の樹海に谺した。
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