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その汗の行方

[952] グルルル 2014-09-16投稿
 総てが凍り付くような冬。行く手を阻むよう雲の層。雪に覆われた無人の校舎。点滅する蛍光灯。薄暗い廊下。ほの赤いランプが、ぼうっと浮かび上がっている。
 そんな情景は、何かが終わってしまうには、いかにも丁度いいもので。
 だから君は、独りで学校の廊下を走っていた。
 全身汗だくで、吐息も荒く、足を懸命に動かして、必死に何かを救おうとしていた。
 何を?
 それは、君にも分からない。
 それこそ、誰にも。この世界の、どんな存在にも。 しかし、君は走らざるをえなかった。
 救わなきゃならないモノがあるなら、理由なんていらない。
 その思いが君を何処までも走らせる。
 ―――ところで。君たちの汗が廊下の窓を曇らせている。空気中にあった生徒たちの汗や唾が、青春の残滓として張りついたものだ。
 汚い?
 でも、それだって、間違いなく君たちのものだ。
 君たちの、青春だ。
 君たちは無意識でその痕跡を残している。
 いつも、どこでも。
 どんな記憶、記録が消失しても、その事実だけは永遠に存在しつづける。
 君たち自身が忘れてしまったとしても、孤独に。
 過去からいつまでも、君たちを見つめている――。

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