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呪われた村〜前編

[531]  けん  2006-09-22投稿
車窓の外には、静かな田園風景が広がっている。
今日は家族で田舎の民宿に泊まりに来たのだ。
サーフを運転する父が、いつもより頼もしく見える。いつもは怒りっぽい母と姉も、今日ばかりは笑い声が絶えない。そして愛犬のペスも、早く緑の中を走りたがっている様子だ。
僕も僕で、すごく楽しみにしている。夏の緑が深々と生い茂るこの田舎で、大きなカブト虫を捕まえるのだ。

日が沈みかけて辺りが薄暗くなってきた頃、民宿のある村に着いた。

その民宿の前に一人のお婆さんが立っていた。

 「今日はようこそいらっしゃいました。この土地は湧き水が有名なところでございまして。豊かな大自然と共に、心ゆくまで楽しんでいってください」

 このとき僕は、このお婆さんに対してひどく違和感を覚えた。その口調に、まるで抑揚というものがなかったのだ。父たちも同じことを感じただろうと思うのだが…
それでも親切に出迎えてもらっている立場上、そのままみんなで民宿の中に入ることになった。
ペスについては、庭の隅のスペースを借りることにした。民宿に近付く前からずっと、ペスがなぜか低い唸り声を洩らし続けているのが気になる。
「車での長旅だったからな。だいぶ疲れたんだろ」
そんな父の言葉にみんなうなずき、部屋に上がって、その長旅の疲れをとることにした。
日はとっくに沈んでいて、辺りには虫の声がいっそう響くようになっていた。

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