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哀しみの果てに3

[587] シャイン 2015-02-22投稿
振り替えると

50前の小柄な女性が驚いた顔で立ち尽くしていた


「宇野君(僕)やろ…小田先生よ…活躍しているみたいね」


小田?
小田先生?
あっあの時
僕を職員室に呼び出し由美子ちゃんを一人にした張本人…


思い出し
戸惑っている僕を前に

小田先生は
言葉を続けた

「私、今はここ(由美子ちゃんの住んでいた部屋)で管理人しているから…
一緒に入ろう…見せたいものあるし」


小田先生は
鍵を開けて

僕を部屋の中に
入るように
促した


僕の目の前に…
懐かしい風景が
飛び込んできた


この狭い1DKに
毎日入り浸ったんだ

日当たりの良い
場所に
幸さんと由美子ちゃんの仏壇があったので

僕は線香をあげた


ダイニングテーブルで小田先生がお茶を入れてくれるので

僕は座り
小田先生と向かい合わせになった


少しの沈黙の後で
小田先生から
話しかけてきた

「宇野君(僕)のことはずっと聞いていたよ…国体に出たことや昨日上場したことも…」


また沈黙が場を支配したが


僕は半端な
小田(先生)の反省や謝罪の言葉は聞きたくなかったし

自分から
口を開くことに
ひどく抵抗感を
覚えていた


視線が行き場なく
さ迷ってる時に

僕はある場所に
釘付けになった…


遠い昔に
柱に刻んだ
相合傘

宇野(僕)
由美子

左右に仲良く
お互いの相手を
書いた字が並ぶ


…そして…
その横の壁には
生々しい

血の滲んだ爪痕が数ヶ所深く残っていた

小田(先生)は
僕の視線の先を見据えて言った

「由美子ちゃん…苦しかったんやろな…逃げようと…あがいたようだけど…亡くなる時には幸さんが足にしがみついとった」


僕は心で叫んだ

由美子ちゃんは苦しいからあがいたんやない…

生きたかったんや…

幸さんの
母子心中を決意した心情

逃れようとする
由美子ちゃんの足にしがみついた
幸さんの心情を思うと涙が溢れてきた


…多分…
僕は亡くなった時の幸さんと同じ位の年齢になった


ふと
あの頃と同じように畳に寝そべりたくなった

しばらく
畳に寝そべると
睡魔が襲い
小田がいるにも
かかわらず

僕は寝入って
しまった


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