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悲愴の水使い?

[936]  ROCO  2005-03-04投稿
暗闇に残されてアリスは一歩も動けずにいた。
しかし、しばらく立ちっぱなしでいると後ろから足音が聞こえてきた。
「…あら?」
足音は確かに人のものだがサラが走っていった方向とは逆だった。
「誰?」
そう足音に向かってたずねると、今度は走ってこちらにやってきた。
「アリスか〜?」
それはまぎれもなくカイの声だった。
「あら、その声はカイね。」
足音が近づくとようやくカイの姿が見えた。
「良かった。無事だったんだな。」
「サラが助けてくれたのよ。」
「そっか。」
カイが辺りを見回す。
「…そのサラは?」
「それがね…妖魔を追ってこの奥に一人で行っちゃって…。」
「よし、俺たちも後を追おうぜ!」
「もちろんそのつもりだけど…。カイ、何しに来たの?」
カイがムッと怒った。
「助けに来たに決まってるだろ!」
するとアリスがカイの体をながめる。
「手ぶらで?」
「へ?」
アリスに言われて自分の体を見ると、確かに手ぶらだった。
「あ…剣持ってくるの忘れてた。」
「おバカ!これじゃサラのお荷物にしかならないでしょう!」
「あ〜…なんつーか、わりぃ。」
カイは笑ってごまかすしかなかった。そして開きなおる。
「無いもんはしょーがねぇよ。さ、行こうぜ!」
強引にアリスの手をとり前に進む。
「はぁ〜…ホントに大丈夫かしら。」
「大丈夫だって!」
アリスの心配をよそにカイはどんどん奥に進んだ。進むと少しずつだが妖魔の叫び声が聞こえてくる。
「近いな。サラがいるかも…走ろうぜ。」
2人はとにかく走った。叫び声が近づいてくると、地面が揺れた。妖魔が暴れているのだ。
「見えた!あそこだ!」
妖魔は深手を負っていた。
しかしサラも肩から胸まで服が血で赤く染まっている。
「ガァァァ!」
妖魔が尾を振り回す。天井の岩が崩れた。しかしサラにふりかかることはない。
『青き水のしもべよ、全てを防ぐ壁となれ』
呪文と同時に水の膜がサラを岩から守る。
カイとアリスが駆け寄る。
「サラ、大丈夫?」
「平気」
そう言うがサラの肩から血が止まらない。顔も蒼白だった。
「ガァァァ!」
『清き水の子よ、刃となりて魔の者を切り裂け』
妖魔が動くより早くサラは呪文を唱えた。
刃が妖魔を切り裂き、ようやく妖魔が倒れた。
「すげー!ホントに魔法使いだったんだ。」
カイはアリスと同じセリフを言った。
しかし、妖魔が倒れたのと同時にサラも倒れてしまった。

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