ベースボール・ラプソディ No.69
試合を終えた聖覧野球部監督、三宅新次郎は取材の要請に応じて数社の記者たちと談笑していた。
その取材を終えて記者たちと別れた三宅は、不意に背中を呼び止められてに足を止めた。
「三宅監督」
聞きなれぬ声に振り替えった三宅は、哲哉と八雲の姿を視認すると老獪な笑みを浮かべた。
「……結城か。
今や飛ぶ鳥をおとす勢いの橘華野球部の司令塔殿が、今さらワシに何のご用かな?」
「厚かましいとは思いましたが、試合の前に挨拶しておくのが礼儀かとおもいまして」
百戦錬磨の名将と相対して、臆することなくこたえた哲哉。
哲哉は中学時代、三宅から聖覧高校への誘いをうけていた。
だが、高校では学業専念をきめていた彼は、それを理由に三宅の誘いを断っていた。
そんな事情を知らない八雲は、二人の間できょとんと会話のやり取りを聞いていた。
「殊勝な心掛けだな。
だがそれだけの事なら、わざわざ真壁をともなう必要はないのではないか?」
主な目的は別の処にあるとよんだ三宅は、哲哉に鋭い視線をむけながら問いかけた。
「あれ、何で自分の名前、知ってるんですか?
どっかでお会いしたことありましたっけ? 」
初対面であるはずの三宅が、自分の名前を知っていたことに驚いた八雲は、無作為に二人の会話に割って入った。
「次に対戦する相手のピッチャーが二試合続けて完封しているとなれば、その名前と顔を記憶しているのは当然であろう」
鋭い視線をむける三宅に、八雲は小首をかしげながら開口した。
「てっつぁんも対戦相手の情報収集には余念がないけど、俺は試合するまでどんな相手かわかんない方が、ワクワクして楽しいけどなぁ」
この短い会話のやり取りだけで、三宅は真壁八雲という人物像を正確に把握した。
対戦相手の情報を欲しないのは余程の自信家か、勝つことに執着がないかのどちらかである。
八雲は後者であり、純粋に野球を愛し、ただプレイすることに興じているのだと。
その取材を終えて記者たちと別れた三宅は、不意に背中を呼び止められてに足を止めた。
「三宅監督」
聞きなれぬ声に振り替えった三宅は、哲哉と八雲の姿を視認すると老獪な笑みを浮かべた。
「……結城か。
今や飛ぶ鳥をおとす勢いの橘華野球部の司令塔殿が、今さらワシに何のご用かな?」
「厚かましいとは思いましたが、試合の前に挨拶しておくのが礼儀かとおもいまして」
百戦錬磨の名将と相対して、臆することなくこたえた哲哉。
哲哉は中学時代、三宅から聖覧高校への誘いをうけていた。
だが、高校では学業専念をきめていた彼は、それを理由に三宅の誘いを断っていた。
そんな事情を知らない八雲は、二人の間できょとんと会話のやり取りを聞いていた。
「殊勝な心掛けだな。
だがそれだけの事なら、わざわざ真壁をともなう必要はないのではないか?」
主な目的は別の処にあるとよんだ三宅は、哲哉に鋭い視線をむけながら問いかけた。
「あれ、何で自分の名前、知ってるんですか?
どっかでお会いしたことありましたっけ? 」
初対面であるはずの三宅が、自分の名前を知っていたことに驚いた八雲は、無作為に二人の会話に割って入った。
「次に対戦する相手のピッチャーが二試合続けて完封しているとなれば、その名前と顔を記憶しているのは当然であろう」
鋭い視線をむける三宅に、八雲は小首をかしげながら開口した。
「てっつぁんも対戦相手の情報収集には余念がないけど、俺は試合するまでどんな相手かわかんない方が、ワクワクして楽しいけどなぁ」
この短い会話のやり取りだけで、三宅は真壁八雲という人物像を正確に把握した。
対戦相手の情報を欲しないのは余程の自信家か、勝つことに執着がないかのどちらかである。
八雲は後者であり、純粋に野球を愛し、ただプレイすることに興じているのだと。
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