セピア色(カラー)5
・放課後、永井先生を交えて僕と剛は教室に残っていた。理由は朝のケンカのせいだ。まず、始めに何故ケンカに発展したのかを先生に聞かれた。僕は、今朝ドッヂボールをしてた時の事を一部始終話した。剛はムスっとしてずっと黙っていた。先生は、
「もうすぐ卒業して中学生になるんだから。そりゃあ男の子だからケンカの一つや二つあるだろうけど……。ケンカ両成敗って言葉があるでしょ。二人とも互い互いに謝りなさい」
先生の言葉に従い僕は、
「ごめん……」
と呟くように謝った。だけど剛は理不尽に思ったらしく黙ったまま僕に謝らなかった。
「あまり遅くなったら家の人が心配するから」
そう言って五時半頃やっと解放された。
・帰り道が途中まで同じだったので黙ったまま僕達は家路を辿った。本当は走って立ち去りたかったが僕のプライドがそうさせなかった。それからお互い黙ったまま別れ道に差しかかった。なんとなく気まずいまま曲がろうとした時、
「貴士」
と剛が僕を呼び止めた。振り返ると剛がうつむいて何か言いたげそうにしていた。だから僕は剛の言葉を待った。
「……ごめん。気付いてたんだ……。線を出てた事。それを無気になって本当にごめん……」
ガキ大将の剛が謝るのを初めてみた瞬間だった。遊んでても先生の前でも謝まらなかった剛が僕に頭をさげたのだ。
「本当は線の事なんてどうでも良かったんだ……。俺、詩織の事が好きで……。ほらお前達って席も隣同士で仲いいじゃん。それでやきもちやいてさ。本当にごめん」
岡崎詩織とは三学期の始めにした席替えで隣合わせになった。
「そうなんだ。全然気付かなかったよ。剛が詩織の事好きだなんて」
「意識のし過ぎかな。なんか恥ずかしくてしゃべりたいけどしゃべれないんだ」 この剛の言ってる意味が痛い程よく理解できた。僕も意識し過ぎて素直になれない事があったからだ。
「卒業記念写真、誰かととったか?」
「いや、まだだけど……」
「貴士は詩織の事どう思ってるんだ」
「どうって……。ただの友達かな」
「そっか。なら良かった。お前も好きだったらどうしようって不安になってたんだ」
「好きも何も友達以上は思ってないよ」
それから剛は少し黙ってから口を開いた。
「俺、皆の前じゃ格好つけて面倒臭いとか言ってたけど詩織に一緒に写真をとってくれって勇気を出して言ってみるよ。だから、お前も一緒に写したいやついるならちゃんと言えよ。そうじゃないときっと後悔すると思う」
ガキ大将の剛の言葉とは思えなかった。だが、剛の言うとうり確かに伝えないと後悔すると僕も思った。 「じゃあな」
そう言うと剛は僕に背を向けて駆け出した。ガキ大将も自分と同じなんだと思うとそれまでふさがっていた気分がすっきりして明るくなった。殴られた痛みさえ和らいだ感じがした。
「もうすぐ卒業して中学生になるんだから。そりゃあ男の子だからケンカの一つや二つあるだろうけど……。ケンカ両成敗って言葉があるでしょ。二人とも互い互いに謝りなさい」
先生の言葉に従い僕は、
「ごめん……」
と呟くように謝った。だけど剛は理不尽に思ったらしく黙ったまま僕に謝らなかった。
「あまり遅くなったら家の人が心配するから」
そう言って五時半頃やっと解放された。
・帰り道が途中まで同じだったので黙ったまま僕達は家路を辿った。本当は走って立ち去りたかったが僕のプライドがそうさせなかった。それからお互い黙ったまま別れ道に差しかかった。なんとなく気まずいまま曲がろうとした時、
「貴士」
と剛が僕を呼び止めた。振り返ると剛がうつむいて何か言いたげそうにしていた。だから僕は剛の言葉を待った。
「……ごめん。気付いてたんだ……。線を出てた事。それを無気になって本当にごめん……」
ガキ大将の剛が謝るのを初めてみた瞬間だった。遊んでても先生の前でも謝まらなかった剛が僕に頭をさげたのだ。
「本当は線の事なんてどうでも良かったんだ……。俺、詩織の事が好きで……。ほらお前達って席も隣同士で仲いいじゃん。それでやきもちやいてさ。本当にごめん」
岡崎詩織とは三学期の始めにした席替えで隣合わせになった。
「そうなんだ。全然気付かなかったよ。剛が詩織の事好きだなんて」
「意識のし過ぎかな。なんか恥ずかしくてしゃべりたいけどしゃべれないんだ」 この剛の言ってる意味が痛い程よく理解できた。僕も意識し過ぎて素直になれない事があったからだ。
「卒業記念写真、誰かととったか?」
「いや、まだだけど……」
「貴士は詩織の事どう思ってるんだ」
「どうって……。ただの友達かな」
「そっか。なら良かった。お前も好きだったらどうしようって不安になってたんだ」
「好きも何も友達以上は思ってないよ」
それから剛は少し黙ってから口を開いた。
「俺、皆の前じゃ格好つけて面倒臭いとか言ってたけど詩織に一緒に写真をとってくれって勇気を出して言ってみるよ。だから、お前も一緒に写したいやついるならちゃんと言えよ。そうじゃないときっと後悔すると思う」
ガキ大将の剛の言葉とは思えなかった。だが、剛の言うとうり確かに伝えないと後悔すると僕も思った。 「じゃあな」
そう言うと剛は僕に背を向けて駆け出した。ガキ大将も自分と同じなんだと思うとそれまでふさがっていた気分がすっきりして明るくなった。殴られた痛みさえ和らいだ感じがした。
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