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キミの手を忘れない。?

[342]  MATSUMAYU  2006-09-25投稿
そっか・・・。

だからあの時全然こっち見なかったんだ。
嫌われてたわけじゃないんだ。
よかった。

アタシは、どうしても彼と話がしたかった。
見てるだけじゃ嫌だって思った。

彼は唇の動きを読めるらしい。アタシの言ってることは判るだろう。
でもそれだと、アタシは彼の言ってることが判らない。それぢゃダメ。会話ぢゃないからね。
だからアタシは手話を習うことに決めた。
忙しいバイトの合間をぬって手話教室に通い始めた。


高校に入って2度目の春が来る頃、
アタシは手話で会話できるくらいになった。

「コレでやっと話すことが出来る。」

アタシは、図書館に入ろうとする彼の肩を叩き手話で話しかけた。

「先輩。アタシの名前は、松坂麻衣です。どうぞよろしくお願いします。」

彼は、チョット不思議そうな顔をしたけど、
すぐに微笑んで手話で返した。

「僕は、ながさと こうです。アナタはなぜ手話ができるのですか?」

「先輩と話したくて、一生懸命勉強しました。仲良くしてもらえませんか?」

彼は、ちょっと笑って答えた。
「こちらこそ、どうぞよろしく。麻衣ちゃん。」

彼の手話は優しかった。
言葉ではないけれど、温かい手話。
優しい手の動きは、彼の心そのままだ。

もっと、もっとこの人に近づきたい―。

以降アタシは、彼を見つけるたびに手話で合図を送った。

「先輩。今日もHAPPYですか?」

「今日もHAPPYだよ。」

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