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恋の涙?

[307]  MINK  2006-09-27投稿
どうやら私にはこれを断る権利すらないようだった。
男に頭を下げられる女ほど惨めな生き物はいない気がした。
「分かったから。頭上げてよ」
私は、小声で言った。
彼は、「本当に?」と深刻な表情を私に向けた。
「三日だけなら断る理由もないし」
そう言うと、優しく「ありがとう」と言った。
私は、他人から「ありがとう」と言う言葉をもらったのはいつ振りだろうと考えた。少しだけ嬉しくなった。
「別にお礼なんか…」相変わらず素直にはなれないでいた。

いつもそうだった。
彼氏の前でも前の彼氏の前でも、もちろん目の前にいる彼の前でも私はきっと素直にはなれないでいた。
「お前、俺の前でも素見せないのな」
何人の男に言われただろう。
それすらも忘れてしまった。

「大丈夫ですか?」
私は、心配そうに覗き込む彼の顔に現実に戻された。
「大丈夫よ。で、明日から三日間でいいわけ?」
「はい。すみませんが」
「別にいいわよ」
私は、見せの外に目を向けた。
雨は、ひどく降っていた。
傘を持ってこなかったサラリーマンが濡れながら走っていく姿を目で追った。
「雨、やむまで此処に一緒にいてくれませんか?」
彼が寂しそうに言った。置いてきぼりになった子供のような目だった。
「別にいいけど」
そう言って、コーヒーを飲み干した。

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