幸運の女神-第二部 15
さすがに有名私立音大だけあって、ミスコンテストの会場は観客の熱気で盛り上がっていた。
女子大の学園祭につきものの、男性誌の取材やらアマチュアカメラマンの姿がそこら中に見える。
《エントリーナンバー7番、品川恵利花さんです。 どうぞ》
「こんにちは〜っ、声楽科二年の恵利花です」
いきなりステージに上げられたにも関わらず、全く物怖じしていないエリカ。
俺、倉沢諒司は、その華奢な体からフワッと放射される白い〈オーラ〉の様な物の存在に初めて気がついた。
「ほぅ、一段とカメラのフラッシュが目立ってますね」
「諒司ィ、…このままスカウトされたらシャレになるで?」
「康介、またその話かよ。…勘弁しろよな」
過去、俺と親密になった女の子全員が、……芸能界入りを果たしているのだ。
◇審査中◇
《それでは、審査結果の発表を行います。
みごと栄光のミス・キャンパスに輝いたのは…‥
エントリーナンバー7番、品川恵利花さんでーす! おめでとーっ!》
どよめきが会場を包み込んでいった。
当の本人エリカは、あっけらかんとした表情でステージの中央に立ち、司会者からマイクを向けられていた。
『恵利花さん、ご挨拶をひとこと!』
「どうもありがとうございま〜す。
…でも会場の皆さん、メガネの度が狂ってますよ〜?」
エリカのとぼけた挨拶に、会場は笑いの渦となる。
「……ふん、予想通りってヤツだ。 このままマスコミ連中を煽り立ててやれば、なし崩し的に芸能界入りって寸法かな?」
「霧島よ、お前がこんなに入れ込む何年振りだ?
ま、せいぜい悪い癖を出さない事だ」
「ふん、…言われんでも解ってる」
会場の隅には、ケイ&ケイプロデュース代表の霧島敬二郎と、その右腕であり、共同経営者でもある北野浩市が姿を見せていた。
「何とか、無事に終わりそうか…」
懸念していた様な大事件も起こらず、俺はホッと肩の力を抜いていた。
…が、やはりタダで終わる事は無かったのである。
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