携帯小説!(PC版)

どす恋

[370]  けん  2006-10-05投稿
小学四年生の頃だった。
 3泊4日の林間学校。

 よくあることなのだが、就寝の時間が一番盛り上がる。

 初日の夜、ある種の興奮も手伝い、僕たちは自分の好きなコを順番に言い合っていた。

 寝ろ寝ろとうるさい体育教師を尻目に、僕たちの告白は途切れながらも続く。

 「へぇー。そうなんや?じゃ、お前も南さんか??」
 ヒロキが大はしゃぎする。

 「そーや。うるさいやっちゃな」
 本当にうるさい。

 その時点で、僕には特に好きなコはいなかった。
 しかし、こういう場である。
 シラけるよりかはうるさいほうが幾分よかったので、それなりに考えた上で、ある女子の名を出した。

 南さんだ。

 親友の井上さんと一緒にいることが多く、わりと端正な顔立ちをした子だった。
 僕は彼女とあまり話をしたことがなかった。

 「ほんなら俺とライバルやな。そうか〜お前と争うことになるんか」
 またもやうるさい。

 結局ふたを開けてみると、他にも数人、そんなライバルがいた。

 そして翌日の朝食の時間。

 奇しくも、僕とヒロキと南さんは同じテーブルだった。
 そもそも、井上さんも含むその四人は、普段から同じ班だったのだが。

 昨晩のことは意識せず、僕は一日のエネルギーをもくもくと蓄える。

 しばらくして、南さんが少し困った顔をしているのに気付く。

 ヒロキはそれを見逃さない。
 「どしたん、南さん」

 「朝からこんなに食べれへんのよぉ…」
 食べかけの大きな厚焼き卵を、切なげに見つめている。

 「ほな、俺が食べたろか? あんま残すのもよくないやろうし」
 まったく調子のいい奴だ。

 「ほんまぁ?助かるわ、ありがとう」
 ええっ。この場合ヒロキがありがとうを言うのであって…

 ヒロキは、南さんの食べかけ厚焼き卵をひょいとつまみ上げ、笑顔でほおばる。

 少し困惑する僕に、ヒロキは一瞬だけ横目を見せた。

 お前には負けへんぞ。3泊4日の林間学校、これからが勝負やからな!

 その目は、そのように語っていた。
 …ような気がする。


      続く

感想

感想はありません。

「 けん 」の携帯小説

エッセイの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス