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ハリスタリス(2)

[295]  海希  2006-10-05投稿
──ここは、海に浮かぶ2つの島と、空に浮かぶ二つの月、そして海に建てられた王城からなる国、ヴァルディア国。二つの島はそれぞれ、沖に建つ『月の城』から見て、右側がハリス島、左側がタリス島と呼ばれていた。

同じく、空に浮かぶ双子の月もそれぞれ呼び名があり、島同様、『月の城』から見て右側に浮かぶ月が『ハリス』、左側に浮かぶ月が『タリス』となっていた。
しかも二つの島の大きさはほぼ同じで、住んでいる人種も、言語も、文化も全く同じだったが、一つだけ決定的に違うものがあった。それは信仰神である。

右側のハリス島は、その名の通り『ハリス神』を信仰しており、左側のタリス島は、これまたその名の通り『タリス神』を信仰していた。

しかもこの二柱の神は、ともに月の化身として考えられてはいたが、守護が全く違い、ハリス神のほうは慈愛と美の守護神で別名『アルテミス』と呼ばれており、一方のタリス神の方は戦と知恵の守護神で別名『シン』と呼ばれていた。

しかしいつの頃からか、ヴァルディア国の人々は、信仰神の違いから徐々に疎遠になり、やがて互いの信仰神が最高神だという主張を始め、それをきっかけに小さな争いが度々起こったため、いつしか互いを憎み合うようにさえなっていった。
もちろん深まった溝は埋まることなく、今なお両島民の憎み合いは続いていた。1?と離れていない島と島を繋いでいた橋は取り壊され、海も柵や網で細かく区切られ、一歩でも互いの領地領海に足を踏み入れようものなら、容赦ない制裁を受けることになる。そしてそれが、両島民の怒りと憎しみにますます拍車をかけることとなった。故に、ハリス島とタリス島の島民は一度も交流を結ぶことなく、憎しみ合ったまま年月だけが徒に過ぎていった。

…お互い、もう不毛な争いはやめたいと思いつつ、それを誰も言い出せなかったために。

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