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どす恋 完結

[425]  けん  2006-10-07投稿
辺りはすっかり暗くなっていた。

 先生の誘導のもとに、ぞろぞろと生徒たちがついていく。

 周りには田んぼや雑木林があり、まさにきもだめしにはうってつけの環境だ。

 僕はこういった時、よく考えてしまう。

 たしかに小学生の夏の夜といえばきもだめしである。
 先生たちにしても、生徒を驚かすことで何かしらの快感が得られよう。
 しかし万が一オリジナルが出た場合、一体どうするというのだ…

 前に家族で行った遊園地でも、そんなふうだった。
 もしこのジェットコースターが爆発でもしたら…

 ばかばかしい。

 今はきもだめしより、ヒロキの行動を恐れるべきなのだ。
 こいつは南さんに何をしでかす気でいるのか…

 順番に、生徒たちがきもだめしに送りこまれる。

 何分、あるいは何秒かおきに、大きな悲鳴が聞こえてくる。

 「なんか怖くなってきたぁ」
 南さんが泣きそうな声でいう。

 すかさずヒロキが応える。
 「大丈夫、俺が先頭行くし!一番前と後ろは男で固める!」
 ちっ。ヒロキが。

 そしてとうとう、我々の班の番がやってきた。

班員は僕、ヒロキ、南さん、井上さんの4人。
 よし、みんな出発だ。

 …

 とはいえ…

 やはりそれなりに怖い。

 妙にガサガサと音がするのは、間違いなく先生だ。
 決してホラーではない。

 わかっている、わかっているのだが…

 ヒロキよ、お前は今どんな男前を南さんに見せつけているのだ――僕は心の中で叫ぶ。
 すっかり一番後ろにいた。

 「ちょっと〜!はよ前行きぃやぁ」
 井上さんがヒロキの背中を押す。

 「あひぃん」
 補足だが、ヒロキは小太りな男だ。
出発前の勇姿は見る影もなかった。

 かくいう僕も、さぞかし情けない姿だったろう。
 まぁでも、本当に怖かったのだ。

 「かっこ悪いとこ見せんといて!」
 ふいに、そう言って南さんは僕の背中を押す。

 なんだこの気持ちは…
 たとえお化けやチュパカブラが飛び出てきたとしても、その瞬間だけは動じなかっただろう。

 南さんの柔らかな両手が、背中に触れている。

 初恋だった。

    終わり

【後日談】に続く

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