深層心理オブジェクト?
犬を、殺したことがある。
その犬は結家の飼い犬で、名前はフールといった。犬種は不明。けれど、ハイブリッドではないだろう。あの屋敷で飼われていたのだから、それなりの血統は備えていると思う。まあ、これは僕の憶測に過ぎないのだけれど……。
とにかく、そのフールが僕の足元に転がっていた。最初は寝ているものだと思っていたけれど、そうではない。フールの首の辺りから僕のつま先辺りまでにかけて、芝生が赤黒く汚れていた。
酸化した血液。
そう認識するまでに、どのくらいの時間がかかったのだろう。数秒、数分。いや、数時間なのかもしれない。いずれにせよ、それを認識した刹那に、僕はフールの死を定義した。
そして、殺してしまったのはこの僕、天枷あぎとである。
どうやって殺したのかは、覚えていない。過程だけが抜け落ちていて、僕の頭の中にあるのは始まりと終わりだけ。でも、それでも僕が殺したことは、確か。ときどき現れる幻視が、なによりの証拠。
そう、ときどき僕の右手は赤く染まる。中指の拳から手首にかけて。
それを視る度に、フールを殺してしまったのは僕だ、と再認識してしまう。リアルに血液が付着していた、子どもの僕を思い出すからだ。
その犬は結家の飼い犬で、名前はフールといった。犬種は不明。けれど、ハイブリッドではないだろう。あの屋敷で飼われていたのだから、それなりの血統は備えていると思う。まあ、これは僕の憶測に過ぎないのだけれど……。
とにかく、そのフールが僕の足元に転がっていた。最初は寝ているものだと思っていたけれど、そうではない。フールの首の辺りから僕のつま先辺りまでにかけて、芝生が赤黒く汚れていた。
酸化した血液。
そう認識するまでに、どのくらいの時間がかかったのだろう。数秒、数分。いや、数時間なのかもしれない。いずれにせよ、それを認識した刹那に、僕はフールの死を定義した。
そして、殺してしまったのはこの僕、天枷あぎとである。
どうやって殺したのかは、覚えていない。過程だけが抜け落ちていて、僕の頭の中にあるのは始まりと終わりだけ。でも、それでも僕が殺したことは、確か。ときどき現れる幻視が、なによりの証拠。
そう、ときどき僕の右手は赤く染まる。中指の拳から手首にかけて。
それを視る度に、フールを殺してしまったのは僕だ、と再認識してしまう。リアルに血液が付着していた、子どもの僕を思い出すからだ。
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