人斬り女(一部)
「こんな私と、まともに向かい合える奴がいるとは。」
夜の雑木林に響く、女の細い声。
「お前だって一部始終を見ていたんだろ、私はとっくに気付いてたよ。」
町からはそう遠くない林、人斬りが現れたのは最近の事。だが、その姿を見た者はいない。正確にいえば、見た者は斬り殺されている。ここにいる青年一人を除いて。
「何も言わないな。恐れているのか、それとも、この先の死を想定して話す気も失せたか?」
静寂を照らす月明かり、それは同時に斬殺された三つの死体も照らしていた。
「本当に何も言わないつもり?」
「…」
「そんな目で見るな、傷が疼く。」
女剣士の肩には斬られた跡がある。恐らく、抵抗された時の傷跡。
「包帯を、持って来ましょうか?」
青年は恐れる事なく突然そう言った。
「余計だ。そんな事より、お前は命を惜しまないのか? 私がこの剣を振るえばお前の命はない、分かっているのか? 言っておくが、お前の持っている小刀などで私の剣は防げない。」
お互いに表情を変えない。女の剣からは血が滴り落ちている。
「僕は自分の命を何より大切にします。」
「そんな奴がなぜ私の前に現れる?」
「あなたに死んでほしくないからです。」
青年の言葉に、女剣士は目つきを鋭くした。
「お前に心配される謂れなんざ、どこにもない。元より私には生への執着心などない。」
「そうですか…」
「今は他人の心配より自分の心配をしろ。お前は生きる意志を持っている。ならばこんな所で斬られたくはないだろう。私について来い、そうすれば私はお前を殺さない。」
女剣士は剣を鞘に収めた。
「生きる意志がないって、辛いですね。」
「お前に何が分かる? 私が人を斬り続けている理由すらも分からないのだろ?」
その後、女剣士は何処ともなく歩き始めた。
「私はお前が気に入った。私について来い。」
「僕もあなたが気に入りました。」
「嘘はよせ、殺人鬼の私のどこを気に入るというのだ?」
「僕にも分からないです。」
「フン、お前を斬るのは、なぜかもったいない気がする。」
青年は笑顔で女剣士について行った。
お互いの心の内は、全く分からない。
(ショート版は、これで終わりです。)
夜の雑木林に響く、女の細い声。
「お前だって一部始終を見ていたんだろ、私はとっくに気付いてたよ。」
町からはそう遠くない林、人斬りが現れたのは最近の事。だが、その姿を見た者はいない。正確にいえば、見た者は斬り殺されている。ここにいる青年一人を除いて。
「何も言わないな。恐れているのか、それとも、この先の死を想定して話す気も失せたか?」
静寂を照らす月明かり、それは同時に斬殺された三つの死体も照らしていた。
「本当に何も言わないつもり?」
「…」
「そんな目で見るな、傷が疼く。」
女剣士の肩には斬られた跡がある。恐らく、抵抗された時の傷跡。
「包帯を、持って来ましょうか?」
青年は恐れる事なく突然そう言った。
「余計だ。そんな事より、お前は命を惜しまないのか? 私がこの剣を振るえばお前の命はない、分かっているのか? 言っておくが、お前の持っている小刀などで私の剣は防げない。」
お互いに表情を変えない。女の剣からは血が滴り落ちている。
「僕は自分の命を何より大切にします。」
「そんな奴がなぜ私の前に現れる?」
「あなたに死んでほしくないからです。」
青年の言葉に、女剣士は目つきを鋭くした。
「お前に心配される謂れなんざ、どこにもない。元より私には生への執着心などない。」
「そうですか…」
「今は他人の心配より自分の心配をしろ。お前は生きる意志を持っている。ならばこんな所で斬られたくはないだろう。私について来い、そうすれば私はお前を殺さない。」
女剣士は剣を鞘に収めた。
「生きる意志がないって、辛いですね。」
「お前に何が分かる? 私が人を斬り続けている理由すらも分からないのだろ?」
その後、女剣士は何処ともなく歩き始めた。
「私はお前が気に入った。私について来い。」
「僕もあなたが気に入りました。」
「嘘はよせ、殺人鬼の私のどこを気に入るというのだ?」
「僕にも分からないです。」
「フン、お前を斬るのは、なぜかもったいない気がする。」
青年は笑顔で女剣士について行った。
お互いの心の内は、全く分からない。
(ショート版は、これで終わりです。)
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