君の掌4
「嫌だよ!遅いって!」そう言うと由希は餅をつまみ上げた。好きだけど悟られるのは恥ずかしい。だからいつも意地の悪い事を言ってしまう。井畑は少しイラついたように眉を片方上げた。「あ?気が変わったんだ!早く返せって!」それでも由希は譲らない。「お断り!遅すぎるんだよ井畑は!」そう言うと由希は井畑から貰った餅にかぶりついた。「あ――!」井畑が叫ぶ。「あはは!ドンマイ井畑!」すると綾歌のふたつ横にいた少女―結花が井畑をからかうように笑った。「テメェ結花!そう思うんなら奪え!」「嫌。あは、あはははは!」少し気色悪く笑うと結花は牛乳を飲み干す。井畑は不機嫌そうだ。「たく…由希の奴ムカつく…」その呟きに由希は少しチクリと来たが、あえて何も言い返さなかった。 「はぁ〜…」由希が吹奏楽の楽器を出しながら溜め息を着いた。「どうしたん由希?」そこに茶髪の少女―恵梨が現れた。恵梨とも同じクラスだ。「ああ…恵梨になら話してもいいかな…恵梨…私ね…井畑が好きなんだよ…」そう言うと恵梨はものっそい目を開いた。「えー!マジ!?あんなのの何処がいいの!?」ぅっ!!グサッと来るなぁ…由希が崩れる。「そうかなぁ?ぅわぁあ〜」恵梨が慌てて由希を支えた。「だ、大丈夫だよ!大丈夫だって!」由希はなんとか体制を立て直す。「あ、あは、ありがとう恵梨ぃ〜」由希が涙目で恵梨を見つめた。恵梨は口が固いで有名。しかも昔から信頼できる娘だから大丈夫だろう。
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