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100日間のキセキ #5

[307]  2006-10-10投稿
 「ふざけないで・・・」
 榎音は小さい声で言った。
 「えっ?」
 「ふざけないでよ!」
 榎音は立ち上がって言った。それを見た看護士は、少し慌てている。そして、なんとか榎音を座らした。 
 「私は早く死にたいんです。健康な体なんてほしくないんです・・・」
 その榎音の言葉を聞いて、医師は静かに言った。
 「榎音ちゃん。そんなこと言ってはいけないよ。キミを生んでくれたお母さんに失礼じゃないか」
 「・・・」
 「とにかく、今日退院していいよ。心奈ちゃん達に電話しておくから」
 医師は、そぅ言うと机の上に乗っている紙に何か書き始めた。そして、榎音は部屋に戻った。
 
 数時間後、心奈達が榎音を迎えに来た。
 「榎音よかったね」
 心奈は嬉しそうに言う。
 「そぅだね」
 榎音はニッコリ笑って言った。

 『お母さんに失礼じゃないか』

 その言葉が頭から離れず、ずっとその言葉だけが繰り返されている。
 (お母さんなんて、どんな人だか覚えてないし・・・)
 榎音の母親は、榎音は2歳のときに死んでしまった。治っていたはずの病気が再発した。と、父親から聞かされていた。母親の顔は、物心つく前だから全然覚えていなかった。
 「お世話になりました・・・」
 そぅ言って、病院から去った。
 
 「よっし。今日はごちそうだからね!」
 「いいよ。そんなことしなくても」
 そんな事を話しながら、歩いて家へ向かった。家につくと心奈はドアを開けた。
 「待っていた・・・」
 家の中にいたのは、見知らぬ女の人だった。
 

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