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Love (2)

[258]  木村遙  2006-10-11投稿
 都市部中心の大きな交差点。その一角に医院建設予定地と書かれた空き区画がある。何度目かのデートの日に、私は彼に連れられてそこへ行った。
「ここに24時間対応してくれる病院をつくるんだ。都会はね、たくさんの病院があるけれど、本当に診てくれるところなんて数えるほどさ。救急車なんて走ってもね、特に夜なんかは、避けて道を空けてくれる車なんてわずかなもんさ。そんな車よりは、救急車と競走しようって車の方が多いんだよ。この交差点はね、特に事故が多いんだよ。僕は内科だけれど、ここに外科もやれる病院があればいいだろう。ここに俺の病院を建てるんだ。随分と無理をしたけれど、もう少しで何とかなる。けどさ、何かと大変さ。営業努力をしようっていう新しい医院には、近くの同業者から医師会を通じて邪魔をしてやろうっていう圧力が、一杯働いてね。患者よりは、結局のところ個人の経済的、社会的利益の方が大事ってことさ、彼らにとってはね。こんな言い方すると、ひどいかもしれないけれど、じいさんがさ、もう寿命なんだ。俺さ、幼い頃に両親を亡くしたから、そのじいちゃんともう死んじゃったけどばあちゃんとに育てられたんだ。じいちゃんが亡くなれば、1億5千万が、俺に入ってくる。そうすれば、ついに夢が叶う。ここに病院を建てるのは、じいちゃんの希望でもあるから。だから、じいちゃんが死んじまうその日まで、なんとかここを維持できれば。それまでは、死にものぐるいさ。」
 都会のまさしく一等地、この場所を維持するって、一体どのくらいお金が必要なんだろう。
「私でよかったら、何でも言って。」
「じゃあ、ずっと俺と一緒にいてくれるかなあ。」
 いつものように冗談風に彼が言った。
 まさかプロポーズとはとれなかった。けど、私にはそれで充分だった。
「私をずっと好きでいてくれるのなら、いいわよ。」
 私も本気を、冗談風に言って返した。

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