君の掌8
私のせいだ、綾歌が退部させられたのは。私が、井畑を好きになったせい―…?「…綾歌…」綾歌は振り向かない。「綾歌ぁ…!」聞こえている筈なのに、綾歌は振り向いてくれない。泣いているのだろう、きっと。「綾歌っ…ごめんねぇ…!綾歌ぁ!」振り向いて、どうかいつもの笑顔を見せてよ… その後井畑ともクラスメイトともろくに話せなかった。綾歌は笑うけど、悲しい笑顔なのはわかってる。恵梨と話をしなきゃいけない…そう思って私は放課後、恵梨を屋上に呼び寄せた。恵梨が不審そうに由希を見ている。「何…由希?」「恵梨…だよね、私が井畑の事好きなのバラしたの…」恵梨はうつむいた。由希が一歩恵梨に近付く。「ねぇ恵梨!どうしてバラしたりしたの?私恵梨を信じて…」「違う、思わず…!」由希が恵梨の手を掴んで叫ぶように話した。「そうならないと思ったから話したのよ!?恵梨だから大丈夫だって、だから―…」瞬間、恵梨が由希の手を振り払った。その顔は今にも泣きそうで、でも険しい顔だった。「私だって…完璧じゃないもん!そんな教育受けてないから、必ずなんか無理だよ!!」そう言い捨てると恵梨は屋上から飛び出して行った。「恵梨!!」続いて追いかけようとした由希だが、突然視界がぐらりと揺れた。「ぇ―…?」立っていられなくて、由希が倒れる。恵梨の姿が消えた。「恵、梨―…」頭が痛い。私、どうしたの?「由希!?」その時、恵梨と入れ代わるようにドアから綾歌が現れる。狭い視界の中で綾歌が駆け寄って来るのがわかる。「由希!大丈夫!?由希!?」駄目だ…意識が飛ぶ… 『由希!!』 どこからか、井畑の声が聞こえた気がした。
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