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魔法の紙飛行機2/2

[310]  鯖人  2006-10-12投稿
「凄い……」素直に少年は驚く。「でも、とまってる。これって飛んでいるの?」
「飛んでいるとも言える」父親は首肯した。「宙でとまっていることは、とても凄いことなんだよ」
「そうなんだ」
「うん、そう。だから魔法」
「魔法?」
「でもいつかは魔法はとけて、それは技術になる」
父親は紙飛行機を眩しそうに見る。部屋が暗いのに、どうしてだろう。そう少年は思ったが、何も訊かなかった。

仕事が終わり技術者は自宅へ戻ってきた。靴を脱いで、そのまま書斎へと向かう。書斎へ入り、カーテンを開ける。オレンジ色の斜光が入り込む。
技術者は書斎の中央へと、視線を向ける。紙飛行機がぶら下がっていた。絹よりも細いテグスが、紙飛行機の上から伸びていて、斜光に反射していた。
父親の言った通り、魔法はとけ技術になった。そのことに携わっている自分を、技術者は誇らしく思う。
今は鉄の塊を飛ばしている。中空で停滞する最新のものだ。けれど、時々紙で作ったのも飛ばしたくなる。技術者は鞄から白い紙を取り出した。

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