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愛のある家庭【出会い】

[373]  雛子  2006-10-12投稿
「おーい!由希子!」

後ろから、誰かが由希子を呼んでいた。


「由希子!待って!ほら。由希子もこれ見ろよ!すっげぇ面白いから!」

その男の子は無邪気な笑顔で由希子に声をかけた。

「由希子?」

そいつは急に悲しそうな顔になる。それから可愛らしい顔をしながら、そいつは由希子の顔を覗きこむ。


「…。」
「とにかくこいよ!」


そいつは頬を緩め、にこにこと笑うと由希子の手を引っ張った。

「…れ?」
「え!何々?」

由希子がちょっと呟いただけで、そいつは目をキラキラとさせて顔をあげた。

「あなた…誰?」

由希子の質問を受けると、そいつはぴしゃりと額を叩いて、しまった!と言う顔をした。


「俺、宮坂俊平って言うんだ!一応由希子とは同じクラスなんだけどさ。」

俊平は一瞬顔を曇らせるものの、満面の笑みを由希子に向ける。

俊平はころころ表情を変えるのに、由希子の表情は変わらない。

「どした?」

俊平の顔は心配そうな顔に戻る。

「…く…で。」
「え?」
「気安く私に構わないで。」

由希子は無表情でそれだけ言うと、校門へ向かって歩き出した。

「へ?なんで?」

俊平は不思議そうな顔で校庭で一人立っていた。

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