幸運の女神-第二部 20
麻紀とバトンタッチした恵利花がコルスに戻ってから、数日経った頃。
「みんな、お疲れさまー」
ラストオーダーをこなした後、歩きづめの信一達に俺はねぎらいの言葉をかけていた。
「ねぇ、…ちょっと話があるけど、いい?」
ロッカールームへ向かう途中、エリカが背伸びする様な仕草で耳打ちしてきた。
「じゃ、お前先に車乗ってろよ。 俺、集計が残ってるから…」
「あら、私が済ませておくわよ。
彼女、何か込み入った話がありそうじゃない?」
「オーナー! いついらしたんですか…?」
「そんな事より、早く着替えてらっしゃい」
「済みません、…お言葉に甘えさせて頂きます」
渡りに船、とばかり後を手島美和に託し、俺は着替えると真っすぐ駐車場へ向かった。
「リョージ、あのね……」
「どうした?やけにモジモジしてんじゃん。
もしかして、……で、出来ちゃった…のか?」
「も〜…違うよ、エッチ!」
「何赤くなってんだよ」
「バカ… あのね、ウチの学校にエミリさん来たんよ」
「エミリだァ? 桜木か」
「うん、…あたしに、モデルやらないか、だって」
「で、どうする?」
「嫌。
だって、…リョージとこうして逢えなくなるもん」
子猫の様にギュッとしがみ付きながら言い募るエリカ。
俺は彼女の髪をそっと撫でてあげた。
「それと…」
「何だ?」
「女優の井沢美紀とか久野ゆかりまで、あたしの顔見に来たよ?」
「お…お前、アイツらから話を……」
「聞いちゃった〜っ♪」
全員、俺、倉沢諒司の元カノ…である。
「でねぇ、この間の霧島さんが、何か裏で手を回してるんだって教えてくれたんよ」
「そうか…。
やっぱ、あのオヤジ何か企んでやがったか……。
あれ? …何笑ってんだよエリカ」
「むふっ♪〈達人〉の口説き方じっくり聞いちゃったしぃ〜」
「コラッ!おめーわっ!」
ちょうどその頃、ラットラーの取材記事の載ったサウンドライフが発売され、思わぬ話題となっていたのである。
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