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シリウス 6

[370]  紫炎  2006-10-21投稿
その黒い感覚は“かえで”に会う度に、より黒く、そして重く、より大きくなっていった。 ある日の夕方、“かえで”からメールが来た。
「ちょっと相談にのって欲しい事があるんです。今から会えませんか?」
というものだった。自分は悩んだ。何の相談かは想像がつく。会いたいと言う気持はあるが、その話を聞くのは正直つらいことだった。だが自分は、嫌われたくないと言う、極々単純な発想で
「いいよ」
と短いメールを打つ。やりきれない気持だった。濁りきった感情のなかで、唯一まだ黒い感情に侵食されていない部分、会いたいと言う気持が、かろうじて残っていた。それにすがるように平静を保つ。
ひとしきりの身支度を済ませ、“かえで”にメールを打つ。
「今から迎えに行く。」
“かえで”からの返信を待たずに自分は部屋をあとにする。外へ出ると、今日も暖かくない太陽が、何処か寂しげに赤みを帯ている。その寂しげな夕日を背中に受け、自分は車に乗り込む。
ピロピロピロピロピロ
今の自分にはうるさすぎるくらいの携帯の着信音だ。
「待ってまぁす。」
そのメールを無表情で眺め、すぐに携帯を閉じる。

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