シリウス 7
“かえで”の家に着くまで、10分とかからなかった。家の前まで行くと“かえで”が外で待っていた。仕事以外で会うのは初めてに等しい。夕日が辺り一面を赤く彩る世界で、唯一赤くない空間。その中心に“かえで”がいた。自分は“かえで”が放つ空気が大好きだった。孤独な空気を打ち払ってくれるからだ。和みのある空気、それが自分の孤独を癒してくれていた。少なくともそれまでは…。
ひとしきりの相談をききおわった。はっきり言って頭に入ってこなかった。「うん」とか「そうだね」生返事に似た反応しか言えなかった。好きな娘の好きな人の相談を受けるとは夢にも思ってなかった。多分、応援しなきゃならないんだろうが、黒い感覚が意思を持ち、自分に囁き掛ける。
「奪っちまえよ」
背筋に寒気が走った。嫌な汗をかいていた。“かえで”が怪訝な顔で自分の顔を除き込む。 「大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。なんともないよ。それより頑張れよ。応援してるからさ。」
自分の内の異変を気付かれまいと、浅い笑顔で答える。
「うん♪」
と、いつもの無邪気な笑顔で答える“かえで”。
空には孤独な三日月が浮かんでいた…。
ひとしきりの相談をききおわった。はっきり言って頭に入ってこなかった。「うん」とか「そうだね」生返事に似た反応しか言えなかった。好きな娘の好きな人の相談を受けるとは夢にも思ってなかった。多分、応援しなきゃならないんだろうが、黒い感覚が意思を持ち、自分に囁き掛ける。
「奪っちまえよ」
背筋に寒気が走った。嫌な汗をかいていた。“かえで”が怪訝な顔で自分の顔を除き込む。 「大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。なんともないよ。それより頑張れよ。応援してるからさ。」
自分の内の異変を気付かれまいと、浅い笑顔で答える。
「うん♪」
と、いつもの無邪気な笑顔で答える“かえで”。
空には孤独な三日月が浮かんでいた…。
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