携帯小説!(PC版)

[561]  つう  2006-10-22投稿
藤木奈津美40歳。十年前に事故で夫の和男を亡くした。幼かった二人の息子を育てて行くのに必死で夫の死をいつまでも嘆くわけにもいかず無我夢中で40歳。子供達も小学校の高学年。もう奈津美といるよりも友達と過ごす方が楽しいと感じるようだった。朝ご飯を作り、子供達と共に家を出て、派遣会社から受けた事務の仕事をこなし、夕飯の買い物をし、急いで作る。遅目の夕飯が済むと後片付けと洗濯。一息つけるのはいつも夜中の1時。そんな忙しい毎日を過ごしていた。
ある日、職場に「山口」という男性が転勤してきた。奈津美と同様妻を亡くしている。年齢は39歳。一ヶ月経った頃、山口は奈津美の凜とした顔立ちに惹かれ結婚を前提に付き合いたいと申し出た。奈津美は迷った。子供達の為にも父親はいた方がいい。でも自分はそれほど山口に関心はなかった。…結局付き合い出した。山口は優しく子供にも愛情を注いでくれていた。時々、少し照れながら愛してると抱きしめてくれる。和男には絶対にできない事だ。でも事務所にゴキブリが出た時は山口が1番に怖がり騒いでいた。和男なら笑いながらゴキブリを外に出しただろう。山口は左利きで食堂で並んで座った時に私の右腕と山口の左腕が当たった。そういえば和男も出会った頃は左利きで腕が当たると面倒だと言って右手でご飯が食べれるように練習した…。山口と付き合いだして一週間、ずっと和男を想っている事に奈津美は気付いた。今まで子供を必死で育てる事でごまかしてきた辛い気持ちと和男への愛が涙となって溢れた。奈津美は和男を心から愛し、これからも自分は和男だけに想いを募らせていくのだと確信した。そしてこれほど深く愛せる人に出会いその人の子供を産み育てる事ができた自分をとても幸せだと感じた。山口には気持ちを話し別れを告げた。
翌朝、奈津美はまたいつも通りの忙しい毎日へと戻った。玄関を出た奈津美はとても美しい妻の顔をしていた。

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