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15歳のデイトリッパー?

[374]  けん  2006-10-23投稿
「えっ…あっ、はい。そうですか…」

電話口からもちろん向こうの声は聞こえない。
ただただ私は、不吉な予感を抱いていた。
まもなく友三がこちらに近付いてくる。

「さて、残念なお知らせがあります」
さほど残念そうな顔はしていない。
「塩田さん、来れへんってよ」

私は少なからず落胆した。しかし不思議と心は折れなかった。

何より、私はこの小旅行が少し気に入っていたのだ。
仮に帰ろうとしても、友三はそのまま私一人を帰らすことだろう。そういうやつだ。
方向音痴はこういう時につらい。

「まぁ長かったこの旅も、もうすぐゴールやしな」
友三が私を慰める。

乗りかけた舟だ。

私はそう考えることにし、それからの機動力とした。

それからの旅は更に過酷を極めた。

チャリをこげどもこげども、目的地に着かないのだ。

「おい友三、いつになったら着くねや!」
と訊いてみても、

「頑張れ、ほんまにあと少しやから!」
と返されるばかりだった。

途中それでも希望の光のようなものがあった。

軽い山道を越えたあたりから、私の見覚えのある風景が広がりだしたのだ。

たしかこの辺に母方のばあちゃんちがあったっけ。
だとすると…児童公園の巨大アスレチック。その周辺には魚が釣れそうな池もあるな。

私の推理は全くの無駄だった。
友三は涼しい顔でそれらをどんどん通過していく。

空はオレンジ色に染まり、辺りには鬱りが見えはじめた。

チャリは進めど、周りのものはどんどんその色合いを沈めていく。

そして辺りが夕闇にさらわれた頃、友三がいきなり大声を出す。

「ここや。着いたわ!!」



続く

感想

  • 4709: 読んでくれてる人がいるんですね。嬉しいことです。作者 [2011-01-16]

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