携帯小説!(PC版)

運命の輪

[440]  最上真  2006-10-24投稿
神…それは人間にできない事をなし得る者の事。よく覚えておきなさい…お前には…
そう言って親父は死んだ。おふくろも、姉ちゃんも死んだ。生き残ったのは俺だけ。
思い出せば溢れるばかりに止まらない想い。手がふるえ、涙がこみあげてくる。あの日何が起こったのだろうか。近隣の住民は口を揃えてこう言う。
「な、何も知らない…」
明らかな動揺。誰もがあの事件を前に不審な挙動を隠せない。
虐殺−そうとしか形容の仕方がない状況だった。俺が家に帰った時、俺がみたものは家中に飛び散った家族の血肉、そして親父の最期。あの時親父が言いたかった事はなんだったんだ。神がどうとか。死を前にしてもまだ神様かよ…
俺の親父は神父だった。この村、籠城村で唯一の。この籠城村の名の由来はかつての大規模な反乱での長期にわたる籠城戦だそうだ…歴史の教師が言ってたっけ。
「籠城戦とは、包囲された者達が立てこもることを言うのだよ!」
興奮を隠さずに語るあの教師はきっと人の死をしらないからあんなにはしゃいでいられるんだ。
この村は昔から戦が絶えなかったようだ。一部の歴史家の間ではここはかつて忍者の里であったという話もでている。
くだらない…そんなことがどうだって言うんだ。平和ぼけした奴等で溢れ返っているこの村なんてどうにでもなっちまえ…
涙で濡らした枕が冷たい。冷えきってしまった心身は全てを拒絶するのみ。心配してくれる同級生にも全く会っていない。高校なんてもういきたくない。
その時、耳をつんざく電子音がきこえた。
「優!おい聞こえてるんだろ最上優!」
玄関で叫ぶ少女の声。隣に住む幼なじみの理沙の声だが、優は無視した。今は人に会いたくない。
「全く、ちょっとは人の心配感じろよ…」
ぼそっと呟きながら声は消えた。
寝返りを打ってまた寝ようとしたその時、どこからか声がきこえる。
お前は運命の輪に入った…運命から逃れられる者はどこにもいない…
「誰だ!」
優は飛び起きた。が、そこには誰もいない。先程まで夕暮れだった外は完全なる漆黒の闇と化していた。 優は外にでて辺りを見回す。しかし当然のごとく誰もいない。もはや疲れから生じた幻聴と判断しかけ、家に戻ろうとしたその時、横目に入った不穏な空気を漂わせる男が口を開く。
「お前が新しく運命の輪に入った者か…こんにちは。そして、さようなら」
男は凄まじい速さで優に向かってきた。

感想

感想はありません。

「 最上真 」の携帯小説

ファンタジーの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス