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雪の華23

[524]  龍王  2006-10-24投稿
「イヤ!イヤァァァ───!! 助けて!助けて聖夜!!」

 朱斐が身を震わせ、涙を流し叫んだ。

「──……」
「たす…聖…夜ァァ」

 朱斐はポタポタ涙を溢し、目を瞑っている。
 そんな朱斐を見て黄藍は押さえを放した。

「フッウッ…ッ」

 あまりの恐怖に壁にもたれたままズルズル床に崩れ落ちた。
 涙を流し、体を震わせる朱斐。

「セイヤ──それがあんたの好きな相手?」
「ちが……」

 涙が止まらず、震えた声で喋る。

「襲われそうになった時、助けを求める。それは好きな奴以外なんだよ」
「──……」

「分からない、の答えがようやく分かったか? 馬鹿な女」
「ッい…い加減にして! ふざけてこんな」

 朱斐がポタポタ涙を流しながら睨みつけた。

「ふざけていない。本気だった」
「なっ」
「お前男の名前呼ぶし、泣くしウザかったから止めた」

 朱斐の顔が今まで見た事無い程憎悪で満ちていた。

「わ…たしは…白藍の……大切な兄弟だから仲良くした…くて」
「ウザイ、目障り、何様?」

 黄藍は泣き崩れている朱斐に容赦無く、言葉をぶつける。

「ッ何で……そんなに」
「良い話を聞かせてあげるよ。朱斐様」

 黄藍はドア窓から中庭に出ると、中庭の方向を向いたまま、朱斐の近くに座った。
 軒下の芝生に座り、木々や草や花を見つめる。

「白藍の母親は自殺した」
「えっ」

 いきなりの爆弾発言。朱斐の涙が止まった。

「馬鹿な女だった」

 黄藍は微かに笑みを浮かべている。
 朱斐は黙って話を訊いている。

「白藍の母親は、白藍の父親、夫以外に好きな奴がいた。だが家の関係で好きな奴以外と結婚。子供(白藍)を生んで、旦那(白藍父)は優しい。だけど──好きな奴を忘れきれず、罪悪感から自殺」

 黄藍が甲高い笑い声をあげる。

「ハハハッ、馬鹿らしい。そう思わないか? お前にそっくりな馬鹿な女」
「白藍の…お母様よ?」
「だから、だ」
「……」
「白藍や他の子供を残して、他の男に恋漕がれ死ぬなんて馬鹿すぎる」

 朱斐は何を言ったらいいのか分からずうつ向く。

「………が……そうだ」
「えっ?」

 黄藍が小さく何かを言った。





──残された白藍が、可愛そうだ──

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