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天使のすむ湖81

[321]  雪美  2006-10-24投稿
バレンタインデーを過ぎると、俺の受験合格を聞いた香里は、それに安心したように、水分も取れない日が続いて衰弱激しく油断できない状態になっていた。
高校自体は、もう自由登校になっていて、時々卒業式の練習に顔出すくらいになっていた。そのうち卒業生代表にも選ばれて、その原稿を担任から渡されて、覚えたりしていた。それでも心配な俺は、香里のそばに付き添い、あまり起きられない日でも、岬に教えられたように、朝起きる時間には、香里の髪をとかしたり、化粧をしたりできるだけ変わらないように配慮していた。

いつだって美しい姿でいたいと言う香里の願いだからだ。時には爪を切り、整えて、ピンクの桜色のマネキュアを塗ったりもした。岬から上手になったと最近はほめられるようになった。
「ありがとう、こんなことまでごめんね。」
いつも香里は遠慮がちにそう言うけれど、俺は楽しんでいた。
「気にしないで、香里の願いだから、美しくいてほしいんだ。だんだん楽しくなってきたよ。」
血の気が失せた顔色を気にするから、頬紅を少し濃い目にしたりしていた。
そう俺自体が楽しんで、化粧を終わるとほっとしたような香里の顔を見たくて、やっているのだった。

時々桜井が来ては、湖でつりをしたり、キャッチボールをしたりして、息抜きをしながらしていた。
けしてイヤではなく、そばにいるだけで、息遣いが聞こえるだけで、生命のありがたさを感じていたからだ。
冬の寒さが、時々身にしみて突然哀しくなるときがある。
それはまるで、近づく死の予感に目をそらすなといわれている気がした。

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