運命の輪02
一瞬だけ見えた。街灯に照らしだされたその男は美しいまでの細身で長身。色白で、手には白い手袋をはめている。手の甲には…赤い十字架。こいつは誰だ。 考えられたのもつかの間、先刻まで数十メートル先にいた男は神のあやかしか、優の眼前にたたずんでいる。 「お、お前は…ぐっ」 手の動きすらとらえることはできぬ。男は優の頸動脈を機械のごとき正確さで締めあげ、優の体をいとも簡単に持ち上げた。 この男の体のどこにここまでの力があるというのか。「や…やめろ。放せ…」 意識が遠退いてゆくのを感じる。もはやここまでか−ごめんみんな…
「…やはりな。神職の血を受け継いでいる。しかしまだ微弱。覚醒はまだのようだな。一つ教えてやろう。貴様の身内を殺したのは他宗派の者だ。そして私もな。貴様等が異端と罵る者達だ!今貴様を殺しても意味はない。覚醒を迎えた後、来たる日にまた会うとしよう…」 男は優を叩きつけると天高く飛び上がり、光り輝く月を背にまるで忍者さながらの身ごなしで消えた。 優はそのまま立ち上がれずに地に顔を埋めた。 −外が騒がしい。人だかりが優を囲んでいる。 「またあの家?」 「嫌ねぇ最近物騒で」 優は立ち上がった。決意を胸に抱いて。 この村を出よう。 翌日、家の中を探った。入ったことのない親父の部屋。 「え…なんだこれ」 和を基調としたその部屋には磨き上げられた日本刀、手裏拳、そして鎧兜があり、異様な紋章が飾られていた。
一枚の手紙も。
「…やはりな。神職の血を受け継いでいる。しかしまだ微弱。覚醒はまだのようだな。一つ教えてやろう。貴様の身内を殺したのは他宗派の者だ。そして私もな。貴様等が異端と罵る者達だ!今貴様を殺しても意味はない。覚醒を迎えた後、来たる日にまた会うとしよう…」 男は優を叩きつけると天高く飛び上がり、光り輝く月を背にまるで忍者さながらの身ごなしで消えた。 優はそのまま立ち上がれずに地に顔を埋めた。 −外が騒がしい。人だかりが優を囲んでいる。 「またあの家?」 「嫌ねぇ最近物騒で」 優は立ち上がった。決意を胸に抱いて。 この村を出よう。 翌日、家の中を探った。入ったことのない親父の部屋。 「え…なんだこれ」 和を基調としたその部屋には磨き上げられた日本刀、手裏拳、そして鎧兜があり、異様な紋章が飾られていた。
一枚の手紙も。
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