心宿る月5
「うっ───ッ」
満月の夜。
戈月は悪夢にうなされていた。
気温が下がり肌寒い、なのに戈月は大量の汗をかいていた。
「───ッ、は…はうえ」
悪夢から逃げ出す事が出来ず、うわ言を繰り返す。
「──……づ…か…づき…戈月」
「──……ッ!」
柔らかい冷たい温度を感じながら戈月が目を覚ました。
「戈月、私が分かりますか?」
「夢……姫」
冷汗を流し、心臓の音が早く脈打っている戈月が傍らにいる夢姫に目線を向ける。
「──……夢は…ただの夢でしかありません。それに囚われるのは」
「俺が弱い証拠──ですよね?」
「いいえ、あなたの心がそうさせるんです」
「えっ?」
夢姫が戈月から放れ、ドアに向かう。振り返らずにあなたも来なさいと戈月に言い出て行った。
戈月がローブを手に慌てて追い掛ける。
「姫? 夢姫! 風邪を引きます! これをハオって下さい」
「いりません。あなたが着なさい」
夢姫について行き、塔の外に出る。
庭は広くなく、高い塀と鍵の扉、外には出られない。
「夢姫?」
「今日は満月ですね」
「えっ」
夢姫に言われ空を見上げた。確に満月だった。
「よく分かりますね?」
「分かりませんよ。ただそう感じるだけです」
戈月は肩をすくめ、苦笑する。
「一体何をしたいのですか?」
「──……ここはあなたにとって異国ですね? 人間は黒髪、あなたは金髪。食べ物も文化も国政も……違いすぎる」
「そう…ですが? そんな分かりきった」
「寂しい……のでしょう? ここは戈月の育った場所と違いすぎる」
「えっ?」
夢姫が空を見上げる。盲目で月も星も夜空も見えない──
「空はいつだって、どこにいても同じです。あなたの国と同じ空です」
夢姫に促され、戈月は再び空を見上げた。
「──……血が」
「──」
「夢の中で……血が見えたんです。視界いっぱいの血。あれは誰の血だったんでしょ?」
戈月はうわ言で母上と言った。
それが答え。でも戈月はそれを忘れていた。何故か──
「あなたはここにいます。戈月」
「──……何故、俺はここに……いるのですか? あなたは〈全て〉が分かるのでしょ?夢姫」
夢姫は何も言わなかった─
答えは必然─
感想
- 8150: この作者さんの作品の中で今までで1番ストーリーが斬新で、好きだと思いました。続きが楽しみです。あと、できればハッピーエンドに……!最近、ヒロインやヒーローが死ぬ作品が、多すぎると思う…。【恋空】とか。 [2011-01-16]
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