夢から覚めたら(第四夜)
ー 第四夜 ー
その人はオレの理由も事情も聞かず、「ウチに来ないか」と救いの手を差し伸べてくれた。
彼女は老舗の旅館を経営している女将だそうで、オレは名前も歳も経歴も偽って、彼女の旅館で住み込みでお世話になる事になった。
女将も他の従業員も、オレの事について深くツッコんだり、あるいは経歴を疑ったりなどという事はせず、温かく、親身になって接してくれた。
そうして、あっという間に10年という歳月が流れた。
私は、かつて自分がオトコであった事はすっかり忘れ、むしろ生まれた時からそうであったかのように、身も心もオンナとして生きていた。
そんなある日、「ちょっといいかしら」と女将さんに呼ばれて部屋に行くと、一枚の写真を見せられた。
それは、お見合い写真だった。
正直を言うと、女将さんに恩返しがしたい一心で懸命に働いて来た私にとって、「そういう事」を考える資格は無いと思っていた。
でも折角の紹介を無下に断る訳にもいかず、女将さんの顔を立てるつもりで「とりあえず一度、お話を」というカタチで返事をした。
いずれにしても、どうせ相手の方からお断りの返事が来るだろうと軽い気持ちで臨んだのだが、お別れをする頃には意気投合してしまい、次回のデートの約束までしてしまった。
私達は両家公認の仲となり、何度かデートを重ね、やがて二人は「男女の関係」となった。
ー つづく ー
その人はオレの理由も事情も聞かず、「ウチに来ないか」と救いの手を差し伸べてくれた。
彼女は老舗の旅館を経営している女将だそうで、オレは名前も歳も経歴も偽って、彼女の旅館で住み込みでお世話になる事になった。
女将も他の従業員も、オレの事について深くツッコんだり、あるいは経歴を疑ったりなどという事はせず、温かく、親身になって接してくれた。
そうして、あっという間に10年という歳月が流れた。
私は、かつて自分がオトコであった事はすっかり忘れ、むしろ生まれた時からそうであったかのように、身も心もオンナとして生きていた。
そんなある日、「ちょっといいかしら」と女将さんに呼ばれて部屋に行くと、一枚の写真を見せられた。
それは、お見合い写真だった。
正直を言うと、女将さんに恩返しがしたい一心で懸命に働いて来た私にとって、「そういう事」を考える資格は無いと思っていた。
でも折角の紹介を無下に断る訳にもいかず、女将さんの顔を立てるつもりで「とりあえず一度、お話を」というカタチで返事をした。
いずれにしても、どうせ相手の方からお断りの返事が来るだろうと軽い気持ちで臨んだのだが、お別れをする頃には意気投合してしまい、次回のデートの約束までしてしまった。
私達は両家公認の仲となり、何度かデートを重ね、やがて二人は「男女の関係」となった。
ー つづく ー
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