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15歳のデイトリッパー【後日談・後編】

[373]  けん  2006-10-31投稿
翌年の春、私は志望校に合格した。

掲示板に自分の番号を見つけた瞬間、体中が震え上がったものだ。

親はもちろん、近所のおばちゃんまでもが大いに祝福してくれた。
それから私は、中学の担任だった先生に電話をかける。

「よく頑張ったねぇ。あなたの学力からすると、ほんま五分五分の勝負やったんよ」

自分は本当に頑張ったのだと、私はその時に実感した。
それから私は、思いきって訊いてみる。
「先生、友三はどうなった?友三の進路は?」

「そのことなんやけどね…」先生が声をひそめる。
私はごくりと息を呑んだ。

「彼も合格したんよ!私立の高校にね」


これで良かったのだと思う。
いや、良かったに違いない。

私はあの日以来、友三には一切会わなかった。
そのことはなおさら彼を傷付けたかもしれない。

それでも同じように言ってくれただろうか。

お前は悪くない。
これで良かったのだ、と。


通りの風がまだほんの少しだけ肌寒い。
私は窓を閉めた。

ふと、窓ごしに一本の木を確認する。
もうずっと長い間眺めてきた桜の木だ。

もうじき桜が咲き乱れ、夏にはいつかの蝉も鳴き出すことだろう。

――あいつ、元気でやってるのかな。

『暇つぶしの友達が本当の友達である』
誰かがそう言っていた気がする。

私は友三の家に電話をかけてみた。


3コールほど鳴って、電話がつながる。

ぶっきらぼうな声が耳に懐かしく響いてきた。




感想

  • 4934: 村上春樹のフレーズが…。 [2011-01-16]
  • 4936: 村上春樹の『羊をめぐる冒険』を最近また読んだんですよ。「暇つぶしの友達が本当の友達だって誰かが言ってたな」とは鼠のセリフですね。作者より [2011-01-16]
  • 5096: この話、なんか好きです☆ [2011-01-16]

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