プラチナリング・5
すると見回りの看護婦が私の嗚咽に気付き、「成島さん?気が付きましたか?」と声を掛けてきた。
私が僅かに顔を縦に振ると、看護婦は、「大変な一日でしたね。成島さん…お腹にお子さんがいらっしゃいますから、過度の心労は母子ともによくないんですが…。」と言った。
その言葉を聞いて、私は思わず勢いよく起き上がった。そして看護婦に、「今何て…?本当に…涼介の子が!?」と問い正した。すると看護婦は僅かに驚いた顔をして、「まぁ…ご存じなかったんですね。ええ、あなた妊娠していらっしゃいますよ。約2ヶ月ですね。」と言った。
それを聞いて、私はまた泣いてしまった。お腹に手を当て、赤ちゃんの…──涼介の形見の存在をなんとか知ろうとした。
当然、まだ判るわけはなかったけれど、私は彼の温もりと同じ温もりを、お腹に当てた手から、確かに感じとった気がした。
「独りじゃない。」
そう誰かに囁かれた気が、した…。
次の日、私は簡単な検査を済ませ、無事退院した。そしてその足で、彼の実家に行った。
彼の遺体は、すでに綺麗に修復されており、はたから見ると眠っているかの様にしか見えなかった。
私は泣き崩れる彼の両親に挨拶し、彼の忘れ形見、赤ちゃんの存在も打ち明けた。
彼の両親は、泣きながら私の手を握り、「涼介の生まれ変わりを宿してくれてありがとう…。」と言った。
その後、通夜と葬式が厳かに執り行われ、彼の肉体は灰となった。私は一つまみだけその遺灰を分けてもらい、小瓶に入れて、お守りにした。しばらくの間、涙が止まらなくて、食欲もない日が続いたけれど、彼の遺灰をみると、不思議と心が落ち着いた。だからいつも、肌身離さず持ち歩いた。
だけど、あの日本当なら彼にはめてもらう筈だったプラチナリングは、未だに紅い匣の中でメモと一緒に眠っている。おそらく、もう一生はめることはない。だって、この指輪を私にはめるべき人は、この世界のどこにも、いなくなってしまったんだから。
…けれど、彼の血を引く赤ちゃんは、いる。私が必ずこの世に誕生させてみせる。彼がこの世に生きて私を愛し、私も彼を愛したという証を、残してみせる…。
私が僅かに顔を縦に振ると、看護婦は、「大変な一日でしたね。成島さん…お腹にお子さんがいらっしゃいますから、過度の心労は母子ともによくないんですが…。」と言った。
その言葉を聞いて、私は思わず勢いよく起き上がった。そして看護婦に、「今何て…?本当に…涼介の子が!?」と問い正した。すると看護婦は僅かに驚いた顔をして、「まぁ…ご存じなかったんですね。ええ、あなた妊娠していらっしゃいますよ。約2ヶ月ですね。」と言った。
それを聞いて、私はまた泣いてしまった。お腹に手を当て、赤ちゃんの…──涼介の形見の存在をなんとか知ろうとした。
当然、まだ判るわけはなかったけれど、私は彼の温もりと同じ温もりを、お腹に当てた手から、確かに感じとった気がした。
「独りじゃない。」
そう誰かに囁かれた気が、した…。
次の日、私は簡単な検査を済ませ、無事退院した。そしてその足で、彼の実家に行った。
彼の遺体は、すでに綺麗に修復されており、はたから見ると眠っているかの様にしか見えなかった。
私は泣き崩れる彼の両親に挨拶し、彼の忘れ形見、赤ちゃんの存在も打ち明けた。
彼の両親は、泣きながら私の手を握り、「涼介の生まれ変わりを宿してくれてありがとう…。」と言った。
その後、通夜と葬式が厳かに執り行われ、彼の肉体は灰となった。私は一つまみだけその遺灰を分けてもらい、小瓶に入れて、お守りにした。しばらくの間、涙が止まらなくて、食欲もない日が続いたけれど、彼の遺灰をみると、不思議と心が落ち着いた。だからいつも、肌身離さず持ち歩いた。
だけど、あの日本当なら彼にはめてもらう筈だったプラチナリングは、未だに紅い匣の中でメモと一緒に眠っている。おそらく、もう一生はめることはない。だって、この指輪を私にはめるべき人は、この世界のどこにも、いなくなってしまったんだから。
…けれど、彼の血を引く赤ちゃんは、いる。私が必ずこの世に誕生させてみせる。彼がこの世に生きて私を愛し、私も彼を愛したという証を、残してみせる…。
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