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クルス case1/1

[494]  奇空の朱&海炎  2006-11-03投稿
 昨日と同じぐらい今日も天気がよく、太陽も焦がれるように暑く眩しく、これぞ夏って感じだ。
俺が今いるところは喫茶店、八百屋、魚屋、なんでもある商店街だ。
この商店街の一画に、異質な雰囲気を放つ探偵事務所を開業した俺は、暇な午前の時間を隣りの喫茶店キッズでビールを飲んで過ごしていた。
「十文字さん。今日はお仕事お休みですか?」
ヒラヒラのメイド服みたいな物を着た、ウェイトレスの早紀ちゃんは、からになったジョッキを笑顔でさげにくる。
早紀ちゃん笑顔、通称天使の微笑を見るだけで今日一日生きていて良かったと思える。
俺が調べたところ、近くの高校に通っている女子校生で、今現在彼氏がいないらしい。
「ああ。今日は定休日だよ、早紀ちゃん」
ちょっと声のトーンを低くして、ハードボイルドぽく、返事をするがそれを無効化するかのように、商店街のガキンちょがうるさく店に入ってくる。
「ああ!クルスが仕事さぼってる!」
ガキンちょの一人が俺を指差し、嫌な名前で俺をよぶ、クルスというのは俺のあだ名みたいなものだ。
誰が言い出したか知らないが、御近所さんの七割は俺の事をこう呼ぶ、なんでも十文字をクロスに英訳して、親しみやすいようにクルスにしたらしい、なんでも英訳したがるのは日本人の悪いくせだ。
「うるせぇ!クソガキども」
「わ〜!怪奇探偵が怒った〜!」
怒った俺を逆撫でるように、嫌なあだ名第二弾を、ガキどもはいい始める。
ガキどもの言う怪奇探偵とは、俺が最初に受けた依頼の内容を、守秘義務すら知らないバカ助手の、佐伯 愛理が商店街の皆さんに喋ったのが始まりだ。噂が噂を呼びそれ以来、依頼内容がどことなくオカルトめいてるところから、怪奇探偵と呼ばれている。
怪奇探偵にクロス、まるでエクソシストだ。
いっそうの事、探偵十文字 隼施じゃなくて、エクソシストクルスに転職しようかまじめに考えてしまう。
「ただいま。早紀ちゃん留守番すまないね」
喫茶店のマスターの一文字さんが帰って来る、俺と同じような名字なのに、彼は一文字さんかマスターと呼ばれ、誰もワンさんとは呼ばない不公平だ。

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