おじいちゃん
《11月27日》 祖父が死んだ。いや、正確には、死んだのは11月23日、だそうだ。その知らせを聞いたのは、兵庫県にある、とあるファッションへルスの一室。女子待機室で客待ちしているときだった。その当時、私の生活は不安定で、毎月20日をすぎた頃に携帯電話がとまっていた。そして今日、やっと繋がったばかり、そんな日だった。夜八時すぎ、携帯が鳴った。ウインドウに〈実家〉の文字が見えた。実家からの電話に出て、いいことがあったためしは無い。深いため息をついた後、ためらいながらも出た。「恵里香ね?」 聞こえてきたのは、長崎訛りの強い、祖母の声だった「どうしたと?こんな時間にめずらしかね…」 まわりの女の子に聞こえないように小声で話す。少し、間があったように思う。そして祖母は、いつになく優しく落ち着いた口調で言った。「お爺ちゃんが、死んだとよ…」「えっ………」 胸が、きゅーっと締め付けられ、喉の奥が熱くなった。そして祖母はまた、ゆっくり話しはじめた。「死んだとは23日よ。恵里香にも電話したばってん、通じらんやったもんね…」悔やんだ。それと同時に、お爺ちゃんの思い出が脳裏を駆け巡った。「お爺ちゃん…」
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