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満たされない訳

[499]  トウ  2006-11-07投稿
なんだろう。
この痛いような、苦しいような気持ちは。

「喰っちゃったの?」
「ンな言い方すんなや。喰ったけど」
「あぁあ…」

昨日の晩、年下の女の子を抱いた。可愛いなって思ったし、相手もその気っぽかったし、お互い酔ってたし。
慣れてた。結構遊んでる子だったんだろう。その方がいい。変に本気になられても対処に困る。

「いい加減女遊びやめろよ」
「関係ないでしょーが」
「アンタはさ、」

相手が言いかけたところで、ペタペタという足音が聞こえた。
自然と会話が途切れる。

「おはようございます」
「っ……おはよう…」
「おはよう」

ザワリ、ザワリと
何かがくすぶるような。

「どうかしたんですか?」
「ん…?や、別に…?」
「そうですか?」

彼女は不思議そうな顔をしながらも、俺達の横を歩いて行った。

「………」
「………」

何故かしばしの沈黙。ごまかすように、煙草を取り出す。
……何を?

「………何」

耐え切れなくなって、こちらから尋ねる。
無言の視線がやたら冷たく感じる。

「………アンタさ」

何となく、予想がついてた台詞。

「あの子好きなんだろ」

彼女はどちらかといえば、無表情でぼんやりしてる事の方が多い子だ。
それでも、話しかけるとふわっと笑って。くだらないギャグでも、笑って。
あぁ好きなのかもって、いつから思ったんだろう。

「あぁ……罪悪感」
「は?」

くだらない事に気付く。あの痛いような、苦しいような気持ちの名前。
馬鹿みたいだ。あの子は俺のものなんかじゃないのに。まるで彼女を裏切ったような、そんな気持ちになったんだ。

「……うん、好き」
「………」
「俺…あの子が好きだわ」
だからか。
誰を抱いても満足しなかった。身体は満たされも、心が満たされてない感じ。
当たり前だ。だってそれは、俺が本当に望んでる子じゃないんだから。

「……ねぇ」
「何」
「あの子とシたい」

蹴られた。思いっきり。

「ったいな!!」
「馬鹿」

年下にこんな冷めた声で馬鹿って言われる切なさ。色々と情けなくて、いい歳して泣きそうになった。

好きだから、欲しいとか、思うじゃん。
俺のものになってくれたらとか、俺の事好きになってくれたら、とか。
誰といても、何処にいても思ってしまうんだ。

「じゃあチュウしたい」
「死ね」




満たされない訳.

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