携帯小説!(PC版)

汽車

[310]  ゆきな  2006-11-09投稿
「ポーッ」

 予定より三十分遅れて汽車がきた

「やーっ。やっときたか」

「お父さん、アメ買ってね」

 私は辺りの人のやりとりに耳を傾けながら、駅員に切符を渡す

『カチリ』

 奇妙な歯形に切り取られたそれは、再び、私の手の中に

 席を見つけて腰を下ろす

 幸い私は窓際だったので、映写機のように

移り変わる景色を見られるので嬉しかった

まだ汽車は動かない

私はこの短い時間がとても好きだ

旅立つ前のワクワク感や、

人々が乗り込んでくるざわめき感、

慌ただしさとで作り上げられたこの空間は、

普段の私生活ではここでしか見ることができないから、

何か特別なもののように感じる

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