航宙機動部隊
銀河で唯一の専制政体―それは単に「帝国」とのみ呼ばれていた。 成立以来70年を経ない浅い歴史と、急激な拡大に象徴される精強な軍事力とによって、今やこの勢力は銀河中の注目を集めるに至っている。 最も、その勢力圏は今だ全人類の0・1%を支配しているに過ぎなかったが。 帝国は純粋な軍事国家だった。 その柱であり中核となっているのが、航宙機動部隊である統合宇宙軍(UUF) この強力無比な宇宙艦隊を除けば、帝国は所詮辺境の文明後進国―言わば「夷狄」に過ぎない。 幾つもの軍閥が覇を竸っていた血生臭い一帯だった。 300年前までこの宙域にまで一応の軍事力と警察力を行使していた旧タレウス連邦の解体後、見捨てられた星間移民と、それを狙う投機家や宙賊、狂信カルト、犯罪と地下経済との恰好の溜り場となり隠れ家となった。 この中から軍事閥が成立し、軍閥混戦のるつぼから帝国が台頭したのだ。 並居る軍閥をあるいは併合し、あるいは吸収し、あるいは騙し討ち、あるいは臣従さして、一通り糾合してしまうと、帝国は、より豊かな宙域、進んだ星系へと、進出を開始した。 進出された側から見れば、紛れもない侵略である。 これといった交換手段を有さない、投資価値も皆無に近い非文明国が、交易しようにもまず相手にされる分けがない。 勢い力ずくで、と言う事になる。 第三代皇帝テロンは、帝国紀年55年、この戦いの中で討ち死にした。 それでも帝国の拡大は止まらなかった。否、寧ろそのスピ―ドは上がって行った。 五年間に及びぶ軍監部による集団指導体制を経て、第四世皇帝として、ニ三歳の若さでエタンが即位する。 爾来七年。 帝国は更に一二の星系と四三の人工植民体と、一七億の星民と九つの星間航路を獲得し、経済収入を五0%・軍事力を三五%増加させる事に成功した。 しかし、この事が、広く知られる様になると、幾つかの星間国家を痛く刺激した。
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