【ナイト・オン・ドラグーン】朱の章〜始まりの時。12説
子供は身を乗り出すようにして、ドラゴンの顔を覗き込んでいる。
遠目にも口元が動いているのがわかる。
子供と竜は言葉を交わしているのだろうか。
「オロー団長閣下、危険です!お下がりください!」
「構わん」
兵士達の制止を振り切って、オローは蒼い竜に歩み寄った。
竜の背に乗っている子供が不思議そうな顔をしてオローに視線を落としていた。
衣類も纏わぬその姿を見て、この子供は竜によって育てられたのだとオローは悟った。そして、辺り一面を火の海にしようとしていた竜を止めたのがこの幼い子供だということも。
「蒼き竜よ。知らぬとはいえ、貴公の棲み処に足を踏み入れた無礼をお許し願いたい」
子供は首を傾げながら、竜とオローとを見比べる。どうやら人間の言葉は理解できないらしい。
「ならば去れ」
ドラゴンは面白くなさそうに首を振った。
オローは少し驚いたが…
「何を驚いておる。人間の言葉が通じると思うたからこそ、話しかけてきたのではないのか?」
「重ねての無礼、お許しを。時に、その子供は…」
オローの言葉が終わるより先に、ドラゴンは「いかにも」と答えた。
「この渓谷に捨てられておった。儂の庭に在る以上、赤子であれ何であれ儂の所有物。捨て置くわけにもいくまい」
(この子だ。間違いない。この子供こそが神託の告げる救世主だ。)オローは改めて子供を見上げた。
子供は怯える様子もなく、オローを見つめ返してくる。
「この子を連れ帰ることをお許しいただけまいか」
ドラゴンの眼光が鋭くなる。が、構わずにオローは続けた。
「人の言葉もわからず、服を纏うことすら知らぬようだが、この子は紛れもなく人の子。ならば、人の手で育てねばなりますまい」
長い沈黙があった。
ドラゴンの背で、子供が居心地悪げに身じろぎをする。
言葉は通じずとも、今まさしく己の行く末が左右されようとしているのは感じているのだろう。
沈黙の末、
やがてドラゴンが口を開いた。
遠目にも口元が動いているのがわかる。
子供と竜は言葉を交わしているのだろうか。
「オロー団長閣下、危険です!お下がりください!」
「構わん」
兵士達の制止を振り切って、オローは蒼い竜に歩み寄った。
竜の背に乗っている子供が不思議そうな顔をしてオローに視線を落としていた。
衣類も纏わぬその姿を見て、この子供は竜によって育てられたのだとオローは悟った。そして、辺り一面を火の海にしようとしていた竜を止めたのがこの幼い子供だということも。
「蒼き竜よ。知らぬとはいえ、貴公の棲み処に足を踏み入れた無礼をお許し願いたい」
子供は首を傾げながら、竜とオローとを見比べる。どうやら人間の言葉は理解できないらしい。
「ならば去れ」
ドラゴンは面白くなさそうに首を振った。
オローは少し驚いたが…
「何を驚いておる。人間の言葉が通じると思うたからこそ、話しかけてきたのではないのか?」
「重ねての無礼、お許しを。時に、その子供は…」
オローの言葉が終わるより先に、ドラゴンは「いかにも」と答えた。
「この渓谷に捨てられておった。儂の庭に在る以上、赤子であれ何であれ儂の所有物。捨て置くわけにもいくまい」
(この子だ。間違いない。この子供こそが神託の告げる救世主だ。)オローは改めて子供を見上げた。
子供は怯える様子もなく、オローを見つめ返してくる。
「この子を連れ帰ることをお許しいただけまいか」
ドラゴンの眼光が鋭くなる。が、構わずにオローは続けた。
「人の言葉もわからず、服を纏うことすら知らぬようだが、この子は紛れもなく人の子。ならば、人の手で育てねばなりますまい」
長い沈黙があった。
ドラゴンの背で、子供が居心地悪げに身じろぎをする。
言葉は通じずとも、今まさしく己の行く末が左右されようとしているのは感じているのだろう。
沈黙の末、
やがてドラゴンが口を開いた。
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