【ナイト・オン・ドラグーン】朱の章†始まりの時。13説
【今までのあらすじ】
突然の帝国軍による奇襲。
アインはジーク団長の命により、先陣し彼ら帝国兵を蹴散らし、蒼竜のレグナとともに任を果たした。
そして、アインも敵の将と対峙するが、封印騎士団の守護している五つの塔は、命の犠牲によって成り立っているのだと、聞かされ動揺する。
衝撃の事実かまたは虚実なのか…
不意を突かれたアインは敵の将に切り捨てられてしまうところだった。が、
駆け付けた、幼なじみの女性騎士エリスが放った槍によって敵の将は貫かれ、倒れ伏す。
エリスから「至急にアンクレット宮殿に向かい状況報告をせよ」と、伝達を受けた。
どうやら、ジーク団長からの命令らしいのだが…
アインはレグナを呼び、宮殿へ向かうのであった。
「わたくしも、宮殿に向かうわ。アインは一足先に行っててちょうだい」
そう言って、エリスは馬に跨がった。
「わかった。」
と短く答えた。それが、同じ騎士団員としてエリスと交わした最後の会話になった。
「気をつけて」
ハッと馬を叩きエリスは宮殿の方角へと駆けていった。
宮殿まではそう遠くはない。
今、アインが立っている場所からはっきり見えるくらいだ。
しかし、さっきまで奮闘していた草原がまるで嘘かのように静けさが漂っていた。
嘘ではない。
アインが立っている地は焼け野はらになっており、なにより帝国兵士の死体が無数に転がっていたからだった。
レグナに乗り、城に着いた。
アンクレット宮殿の奥に位置する騎士団長の居室に足を運ぶのは久しぶりだった。
オローが生きていたころは当たり前のように出入りしていたが、露骨に自分を嫌う者が部屋の主となった今ではさすがに敷居が高い。しかも、周辺には常に側近たちや警備の者達が目を光らせている。オローのころよりも近寄り難くなったと感じているのは、実はアインに限った話ではなかった。
しかし、今日はどうしたことだろう。妙に人が少ない。もしや他の封印の塔に何か異変があって、警備の兵士たちはそちらに駆り出されているのだろうか。だとしたら、今回の急な帰還命令も納得が行く。
ノックをし、了解を得てから部屋に入った。
ジークの黒光りした鎧が目に入る。
「思いのほか早かったな。」
続。
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